after 1 クソ鈍感な、

【 SIDE MATSUKATA 】



養護教論である牧先生の遣いで、今日入寮する二年生が入る205号室に挨拶しに行くと言っていた星悟くんを追って、呼び出した。


普段と変わらない様子で件の205号室から出て来た彼が僅かな火薬の香りを纏っていることに気が付いた後、僕を見つめる初めましての瞳と目が合うも、ドアは閉まる。


何だろう?


何か言いたそうな雰囲気ではあったけど——


「牧センセ、俺が約束すっぽかしたの怒ってた?」


「ぅん、少し」


僕を通り過ぎる星悟くんと肩を並べて来た道を戻ると「だよなー」と若干億劫さの滲む星悟くんがそこでその会話を終え、再び薄く口を開いた。


「まー戸堂ならある意味大丈夫か」


「?」


今度は何の話だろう。『戸堂』は今出てきた205号室のもう一人の寮生。



「クソ鈍感だろうからな〜」



星悟くんは、ジャージのポケットに手を突っ込んだまま

大きな欠伸をひとつした。






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