episode15 日曜日


波乱万丈だった修学旅行から

もう1週間がたっていた。


毎週日曜日は、凛太郎が

来るのが習慣になっていた。


「優香ちゃん、りーんーたーろ」


「ふーふーふー!」


「それじゃ息ふいてるだけだよ…」


優香が首を傾げながら?という表情で

凛太郎をみる。

今日は母さんがいないので

お昼ご飯は悠介の担当だった。


「凛太郎、オムライスでいい?」


「やったー!」と喜ぶ。

優香も真似して手をあげる。


そんなたわいも無い瞬間が

しあわせに感じる。

凛太郎いる、それだけで

家の中が明るく感じる。


自然と笑みが溢れる。


こんな幸せな気分が

ずっと続けばいい。


そんなことを思いながら

玉ねぎをきっていた。


ぼすっ

優香が足に抱きつく。


「ん?どうした?」


あれ、あれと優香が指をさす。


「こいつなんで寝てんだよ」

ブランケットをかけると

んーと言いながら夢でも見てるのか

凛太郎が笑っている。


優香の目を塞ぎながら

凛太郎の頬に口付けた。


はっ!となり、自分のしたことに

顔が火照っていく。


「優香、ごめん」


優香が1枚の紙を渡す。

そこには優香と凛太郎のやり取りが

書いてあった。


(おにいちゃんのすきなひとは?)

(ままとゆうか)

(れんあいてきに!)

(れんあい?)


と、そこで終わっていた。

こいつは優香になんてことを

聞いてるんだと呆れながら


「俺が好きなのは…」


優香がなにか書いている。


(りんたろーおにいちゃん?)


と、見せてきた。


顔が赤くなるのが分かった。

「はあ~」と、顔をふせて

優香には決して見せられないと思った。


「さて!オムライス、オムライス!」と

立ち上がった。


何分たったのだろう、

「いいにおい…」と凛太郎が

呟いた。


悠介がキッチンでオムライスを

作っている。

俺と違って身長も高く

顔も整っていてファンクラブもあるくらい

女子からは人気だ。

だけど、女子との絡みは佳苗ちゃんくらいしか

見たことない。

何でもこなせて、頭も良くて

俺とは真逆だ。


「かっけーよなあ…」


そのとき、前に寝ているところを

キスされたことを思い出した。


ぼわっ!と全身が熱くなる。

なんでしてきたのか、

ただの気まぐれなのか、

俺の頭では考えきれない。


「凛太郎?起きた?」


「ふぇ?!」


「飯、できてるぞ」


相変わらずのポーカーフェイスに

自分でも照れる。


「お、おー!くうくう!」


さっきの優香ちゃんとの

やり取りの紙がない。

え、あれ、えー!っとなっていると

優香ちゃんが渡してきた。


そこには、俺の名前が書いてあった。


「優香ちゃん、このことはしー!な?」


「?」


小さく紙を折ってポケットに隠した。


「さあーて、おかわりするぞー!」


「凛太郎、うるさい」


そのことを悠介が知ってるなんて

俺は知らないまま。

寝てる俺の頬にキスしたことも。


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