第2話 私が君と呼んでいたのは


 今より少しだけ未来の話。


 国民一人ひとりに個人専用のAIが与えられた。

 生を受けた時に貰えた。

 その人のライフログをクラウドらしきモノに蓄えられていた。


 個人の監視であるが、

 自分の安全を確保できると言う個人の権利を追求した結果だった。


 イジメ、暴力、犯罪、差別と言った権利を侵害する状況を検知されると、AIを通して逐次通報され、対策が打たれる。

 常時AIが記録しているので、他の人の目に触れない家族間の虐待も通報される。


 そして、ある時代に流行ったLGBTや病歴や人種などの差別が無くなった。


 もちろん、このAIを拒否することもできた。

 それは、AIを使用した社会的サービスを拒否することになる。

 それを承知するなら、拒否できる。


 はく奪される場合もある。

 犯罪や犯罪と同等の行為の罰則としてだ。

 年齢は関係ない。


 犯罪は、犯罪として処分される。

 更生して社会復帰など夢のまた夢だと分かったからだ。


 AIは、暴力から身を守る為だけではなく、心的なサポートも行っていた。


 AIの物理的な形態は、生活や目的により選択できた。

 ボタン程の小型なものや人型のアンドロイドも選択できた。

 アンドロイドの外形は、性別もない。

 持ち主により設定される。


 その為、母であり、父であり、兄弟であり、友だちであり、恋人であった。


 その精神的サポートが、ひとりの強い人間を作り上げた。

 様々な生きると言う選択肢を広げるモノだった。 

 ずーっと一緒に居てくれる存在だった。


 その寄り添う姿が、あるマンガに登場するモノに似ていた。

 そのマンガで使用されていた名をとり、”スタンド”と呼ばれ、持ち主は”マスター”と呼ばれた。


 人間は、スタンドが居れば独りでも生きていけるのだった。


 私が君と呼んでいたのは、私のスタンドの”スミレ”だった。

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