第10章…昆虫

学校で知り合った女の子が揃いました

 俺はつばきちゃんと友達になった。

楓ちゃんはおこだった。楓ちゃんもつばきちゃんの友達になって3人で友達になるという条件でギリギリのギリギリで許してもらえた。


しかしつばきちゃんは楓ちゃんとは友達になりたくないとハッキリ言った。

まあそりゃあ、いくら友達がいなくて悩んでいるとは言ってもつばきちゃんにだって友達を選ぶ権利はあるが……


しかし楓ちゃんも友達グループに入らないと許されない条件なのでその事情をつばきちゃんに説明し、つばきちゃんも渋々了承してくれた。


というわけで俺、楓ちゃん、つばきちゃんの3人は友達になった。楓ちゃんは監視目的がほぼ10割を占めるけど。




 それから1週間後、俺はいつものように高級車で楓ちゃんと一緒に登校中。

せっかく一度は機嫌を直してくれた楓ちゃんだったが、この1週間ずっとゴキゲンナナメな感じだった。あ~んはしてくれるけど。



「楓ちゃん……そろそろ機嫌直してくれないか……」


「だってあの女……涼くんのことを『涼馬さん』とか呼んでるんだよ……! ぶち殺してやりたいよ……」


「楓ちゃん、言葉遣い悪くなってるよ! 落ち着いて!」



そんなに可愛い声でそんなに強い言葉を使うのもそれはそれでドキッとするものがあるが、やっぱり怖い。

楓ちゃんは相変わらず怖いが、俺だってビクビク怯えてるだけなわけじゃない。



ナデナデ


「っ……もうっ……涼くんずるいよそれは……」


この1週間で、頭を優しく撫でてあげると楓ちゃんは落ち着くということを発見した。顔を赤くしてプイッとそっぽ向いてて可愛い。




 学校に到着。車を降りて2人で校門をくぐる。



「涼馬さーんっ!」



つばきちゃんの登場が早すぎる。

つばきちゃんと友達になってからのこの1週間、毎日のようにつばきちゃんは俺に会った瞬間抱きつこうとしてくる。楓ちゃんは毎回それを全力で阻止する。この1週間それが繰り返されてきた。


今日に至っては校門をくぐった瞬間につばきちゃんが走ってきて俺に飛び込んできたのでビックリした。

楓ちゃんは、今回はタックルをつばきちゃんにぶちかまして阻止した。



「痛いですよ中条会長……」


「野田先輩、何度言ったらわかるんですか? 涼くんに肉体的接触をするのは厳禁です。いついかなる時でも私はそれを許しません」


「友達ならハグぐらいしますよ!」


「友達だろうと必ずしもハグする必要はありません」


「ぶー……」


つばきちゃんは不満そうにする。

つばきちゃんにすごく懐かれた。俺としては正直嬉しい気持ちもなくはないが、それを楓ちゃんに知られたら殺されるのでな。つばきちゃんに対しては毅然とした対応を貫く。



「涼馬さん……」


「な、なんだ?」


つばきちゃんに上目遣いで見つめられる。なんでこんなに美少女なんだよ。ここまでの美少女に見つめられたら否が応でも心を乱されてしまうじゃないか。楓ちゃんの前で他の女の子に照れたりすると自殺行為なんだよ勘弁してくれ。



「中条会長が邪魔なのでどこか2人きりになれるようにできませんか?」


楓ちゃんの前なのに本当にハッキリ言うよなぁつばきちゃんは。

楓ちゃんの背後に不動明王が出現している。ものすごく怒っている。



「野田先輩、いいかげんにしてくれません? 2人きりになんて死んでもさせませんよ。それだけは絶対禁止って何度も言わせないで。

私が友達になったからにはそれ以外のことなら大体のことは叶えてあげますよ、中条グループの権力でね。だからこれ以上涼くんと距離を縮めようとするのはやめてください」


「何言ってるんですか中条会長。私だって野田グループの令嬢なんですから金持ちの権力なんていりませんよ。やはり中条会長は私に不要ですね」


「……野田先輩さぁ、私の慈悲で涼くんの友達になれたってことわかってないみたいですね。じっくりわからせてあげてもいいんですよ?」


「2人ともケンカはやめてくれ!」



2人の言い争いをなんとか止めようとする。つばきちゃんは俺の言うことには従ってくれるみたいなのでなんとか収まった。

2人の女の子が俺のことで争うというのは生まれて初めての経験で、嬉しい気持ちがないと言えばウソになる。しかし胃がヤバイ胃が。1週間この調子で胃が痛くなりそうだ。毎日が修羅場になるんだろうか……



「おい、こんな校門の目立つ場所で女を侍らせてんじゃねぇよおっさん」



ゲッ、堀之内さん……3人に増えたあああ……


そういえば1週間の停学って楓ちゃんが言ってたけど本当に停学になってたんだったな。1週間経ったんで復帰してきたようだ。

金属バットは楓ちゃんに没収されたっぽいけど、やっぱり怖いよこの子。バットなくても俺より余裕で強いだろうしあのナイフみたいな目つきだけで俺は小動物のように萎縮する。


楓ちゃんが俺を庇うように俺の前に立った。



「堀之内さん、キミもいいかげんにしてくれない? 停学にしたのに全然反省してないみたいだね」


「うるせぇデカパイ女。そのおっさんを学校に野放しにして性犯罪が起こったらどうすんだ。そうなる前にあたしがそいつを排除しようってんだよ。てめぇこそ邪魔すんな!」



楓ちゃんは呆れたようにため息をつき、瞬時に堀之内さんの背後に回って腕を拘束した。



「いってぇ! 離せデカパイ女!」


「堀之内さんはこの学校を守ろうとしてくれてるみたいだけどさ、悪いけど余計なお世話なんだよね。

涼くんは私が連れてきたんだから、万が一涼くんが性犯罪起こしたとしても私が責任を持って涼くんをシメるからさ。だから堀之内さんはお呼びじゃないの」


怖っ……シメるのところガチの目をしていて俺は陰嚢がキュッとなった。

性犯罪なんてするわけないけど肝に銘じておかないとな。



「涼馬さんっ……」


楓ちゃんが堀之内さんをシメている間に、つばきちゃんが俺に擦り寄ってきた。そして俺に手を伸ばす。そして殺気が襲ってくる。



「ドサクサに紛れて涼くんに触ろうとするな!」


ドカッ!!


「ぐはぁっ!」



楓ちゃんが神速でつばきちゃんにまたタックルする。

楓ちゃんスキがないな全然。楓ちゃんがいれば俺も間違いを犯すことはないだろうし、怖いけど心強いよ。

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