楓ちゃんはベッドの上で悶えまくりました
※楓視点
ありえないくらい顔が熱かった。私は急いで自分の部屋に戻って自分の顔を冷やそうとした。
でもなかなか冷えてくれない。さっき涼くんにされたことを鮮明に思い出してしまい、さらに熱くなる頬を両手で覆うのだった。
ちょっとお仕置きするだけのつもりだった。軽く涼くんに『めっ!』ってして軽く踏みつけてやろうかなって思ってただけ。それで裸足だった。
それがまさか、涼くんが私の足の甲にキスしてくれるなんて思わなかった。
足まで真っ赤になってて、キスしてくれた部分は特に熱を帯びていた。涼くんの唇が触れたのを意識してまた顔を熱くする。今、自分の身体を冷やすのは無理ゲーに近かった。
ああ、足の甲を洗いたくない。永遠に涼くんの感触を残しておきたい。
涼くんへの想いが止められなくなり、私はコットンを用意する。
そのコットンを足の甲に押し当てる。もちろんさっき涼くんの唇が触れた部分だ。
吸水性の優れたコットンで、涼くんの唇の温もりを染み込ませるために何度もコットンを押し当てた。
何度も何度もしつこいくらいに、キスされた部分を付着させたコットン。それを今度は私の唇にそっと当てる。間接キスだ。
涼くんとの間接キスを十分堪能した後、そのコットンは透明な瓶に入れて、しっかりフタをして日付を書いたラベルも貼って机の上に置いた。
昔涼くんに貼ってもらったバンソーコーのとなりに並べる。涼くんの成分を含んだ、涼くんとの想い出がまた増えて、笑みをこぼすのをやめられなかった。
10分くらいコットンを眺めた後、私はベッドにダイブする。そして布団を被った。
―――ああああああああああああ!!!!!!
私は布団の中で悶えまくった。
足をバタバタと大暴れさせた。誰も見てないとはわかっていても、恥ずかしすぎて両手で顔を隠した。
自分の感情が大爆発した結果こうなった。大企業のお嬢様ゆえに1人になれる時間がすごく少なくて、今まで抑え込んできた気持ちを解放する貴重な時間だ。
脳内で再生される。
涼くんが私の足の甲にキスしたシーン。そして私の目をまっすぐ見つめて『楓ちゃんの方が好き』って言ったシーン。
楓ちゃんの方が好き……楓ちゃんの方が好き……楓ちゃんの方が好き……涼くんは私の方が好き……!
ふふっ、ふふふふふふ。
私>>>野田先輩。これ大事。テストに出る。
涼くんの口からハッキリとその言葉が出て、私は嬉しくて嬉しくて仕方なくて。
どんなに機嫌が悪い時でも一発でゴキゲンルンルンにしてしまう魔法の言葉。
映像を一時停止したり、巻き戻しして何度も最初から再生したり。脳内映像は刹那の瞬間まで自由に私の思うがままに再生してくれるから超便利。
何度も再生してはその度に悶えてジタバタするのであった。
はぁ……ずるい。涼くんはずるい。
涼くんが他の女と仲良くするなんて絶対に無理だったはずなのに、あんなに真剣な目でまっすぐ見つめられたら、どんなことでも許してあげたくなってしまう。
他の女とセックスでもしてない限り、私は涼くんのことならなんでも許してあげたくなっちゃう。
中条グループのパワーすべてを利用してでも、涼くんのためならなんでもしてあげたくなっちゃう。
涼くんのためなら……破産しても構わないって思っちゃう。
「ふふっ、ふふふ……」
私はゾクゾクとした悦びで布団の中でしばらく笑い続けた。
―――――――――
※涼馬視点
「涼くんっ。はい、あ~ん!」
「っ……あ、あ~ん……」
翌日の朝。楓ちゃんはすっかり機嫌を直してくれた。よかったよかった。
今日はあ~んしてくれる。前もこんなことあったな。やっぱり昨日は昨日、今日は今日って感じで切り替えてくれる。俺はとても嬉しかった。もしもうあ~んしてくれなくなったらと思うとすごく不安になってたから。
楓ちゃんに食べさせてもらった瞬間、幸せの爆弾が口の中で弾けるような感覚があって、噛む度に幸せな気持ちになった。
―――
その日の昼休み、学校の屋上。
俺、楓ちゃん、つばきちゃんの3人が集合していた。
楓ちゃんがつばきちゃんを屋上に呼び出し、俺も連れてこられて、3人揃った。修羅場みたいで俺は超肩身が狭かった。
「私に何か用ですか、中条会長」
「はい。ちょっとこっちに来てくれませんか、野田先輩」
楓ちゃんは満面の笑顔でつばきちゃんに手招きをする。笑顔すぎて俺は恐怖で震えた。
つばきちゃんは素直に楓ちゃんに近づいていく。
―――ビシッ!!
「いったぁ……!?」
楓ちゃんはつばきちゃんのオデコにデコピンを食らわせた。
ただのデコピンではない、楓ちゃんのデコピンは下手な鉄砲より威力がある気がした。
つばきちゃんはオデコを抑えて涙目でプルプルと震えた。ああ、すごく痛そうだ。かわいそう。
「野田先輩、私がいない間に涼くんと友達になったそうではないですか」
「いたいぃ~……は、はい、そうですが……」
「友達がいなくて寂しい思いをしていたら、優しい涼くんが友達になってくれたそうですね」
「……そうです」
「いっぱい友達が欲しいんですよね?」
「……まあ……欲しいですね」
「ならば仕方ない、この私が友達になってあげます」
「えっ……?」
「私と涼くんと貴女の3人で友達になりましょうって言ってるんですよ。
私は涼くんと貴女がよからぬ関係にならないように監視することができる、貴女は友達が増える。ウィンウィンだと思いませんか?」
楓ちゃんはハッキリと言った。ハッキリと言うことに関しては楓ちゃんもつばきちゃんに負けてない。
つばきちゃんは数秒間フリーズした後、フッと笑顔を浮かべた。
「いや、中条会長はいいです」
つばきちゃんはさわやかな笑顔でハッキリとそう言った。
今度は俺と楓ちゃんがピシッとフリーズする。
「……野田先輩? 今、何て……?」
楓ちゃんは聞き返した。笑顔だけど怒りのマークがいくつもついてるのがハッキリと確認できた。
「別に中条会長とは友達になりたくないので、いいです!」
ちょっ、つばきちゃああああああん!!!!!!
そういうトコだぞ!! 本音では別に仲良くしたくなくても、表面上だけでも仲良くしようよ!
楓ちゃんから笑顔が消え失せて、怒り100%になった。
「やっぱりこの女嫌い! 殺す!!」
「ちょっ、落ち着け楓ちゃんっ!」
ここは学校で周りに生徒がいるにも関わらず楓ちゃんは暴れ出しそうになった。それだけ怒っているということ。
怒り狂った楓ちゃんを止めるのは大変であった。
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