第13話

「……全世界の太陽光発電システムを不正利用クラッキング、急速充電」


 相棒が“充電完了”と応答した。

 ココは深呼吸する。逡巡しゅんじゅんの末に、声高に宣言した。


「地図から座標取得。目的地は大統領官邸。標的を発見次第、戦闘開始!」


 刹那、ココの腕から雨あられの銃弾が飛び出した。ネグリジェは発砲した銃弾によって引き裂かれた。

 腕が機関銃マシンガンになっているだけではない、ココのボディにはありとあらゆる兵器が内蔵されている。

 ──ココは、全自動機械操縦人形職人のマリオンこと、天才科学者ビマゲオが遺した最高傑作の殺戮兵器だった。


「マリオンの“最後の仕事”が見たいのよね? 見せてあげるわ。これが、あんたたちが生み出した化け物よ」


 World Wide Waveが七色に発光し、複数の飛行兵器ミサイルが発射される。爆撃の流星雨が空一面を覆い隠した。


「……これは、マリオンの血」


 飛行兵器は急降下、大統領官邸めがけて大気を振動させる。

 遅れを取らないように、ココは飛行速度を上げた。前方で爆発音が炸裂した。


「これは、マリオンの肉と骨」


 飛行兵器の雨に終わりはない。第一陣よりも、爆発の規模が大きくなった。


「そしてこれが、マリオンが最期に味わった恐怖と苦痛よ」


 爆発と共にココは大統領官邸に到着した。舗装された道路がえぐられたように爆破されている。

 瓦礫の陰に生体反応があるが、警戒しているのか姿を現さない。息を詰めた呼吸の音だけが聞こえる。

 ココはかまわずに、のっしのっしと道路を歩いた。能力を全解放しているため、本来の重量に戻っている。瓦礫の山の前で立ち止まった。


「大統領、そこにいるのはわかっている。あたしに会いたかったのでしょう? あたしが、あんたがマリオンに作らせた高次元電磁波爆弾の完成形よ。あたしの心臓には、全世界を破壊する爆弾が埋め込まれているの」


 瓦礫を蹴ると、驚愕した表情の初老の男が顔を覗かせた。

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