第3話
それがミケには気に入らないんだろうけど。
「六花さんくらいですよ。岬さんのことを猫と同じレベルで呼ぶのは……」
隣の席から大きな溜息混じりの声を放ったのは、田丸君の指導係でもある同僚の大村 モカちゃんだ。
彼女はわたしより3つも年下なのに、綺麗な顔立ちの上、大人っぽくてスタイルも良くて女子力も高い。
入社当時は社内の男どもが一目見たいと列を作ったほどの。
「そう?」
忙しい私の邪魔をする今の岬は猫以下ですけど?と言いたいのをぐっと堪えた。
斜め後ろから、ジトッと湿気を帯びた視線に気づいたから。
視線の持ち主は分かっている。派遣できている若い女の子達のもの。
うちの会社『スカイガーデン』は住宅リフォームをメインに取り扱っている。
従業員は50人程度。うち一級建築士3名と、二級建築士7名、他住宅に関連する有資格者が十数名と派遣社員に事務員が数名。
私は美術系の大学を卒業後、事務員として入社し、今年で4年目だ。同期入社の岬は大学の建築学科を卒業後二級建築士の資格を取り、この会社に入社したと聞いた。
今でこそミケなんてアダ名で呼ぶこともできているけれど、同期入社とは言えなんだか近寄りがたくて、まともに口をきいたこともなかった。
というのも、岬 恵斗もモカちゃん同様人から注目される外見をしていて、周囲に集る人達も結構派手だったりするから職種から地味な私は一歩引いたところで静観していたのだ。
そんな私がこんな風に二人と気楽に話せるようになったのは、自分で言うのもなんだけど、単にこの適当な性格故だと思う。
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