第2話

「溜め息、幸せが逃げるよ?」



ピアノの旋律が途絶え、代わりに低く、穏やかな声音が響いた。



「東条さん、逃げるの?」



問えば、



東条さんは、一瞬言葉を失い眉を寄せた。



直後、ふはっ、と吹き出した。



「……逃げないな、」



なんの躊躇いもなく答えたことにホッとした。



「よかった」



嬉しくて頬が緩む。



好きなヒトがいるくせに、こんな風に優しい彼を、



私は……どうしようもなく好きなんだ。

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