第53話

せっかくおさまったはずの空気が逆戻りし、完全に修羅場となってしまった。気づいてないひとも中にはいるけど。


あぁ、もう。

わたしは何も悪いことしてないのに。




「わたしの彼氏だよ〜。学校の帰りにここに寄ってくれたの。てか、あっちゃんがそっち行くって言うなら、わたしたちもそろそろ行こうかな。またね、ともり」

「あぁ、うん。またね」


立ち上がったわたしは、向かいに座るなるの手を引いて、店の外へ出た。



涼しかった店内とは違って、暑さがまとわりつく。じわじわと汗が広がっていく感じが気持ち悪い。

思わずなると手を繋ぐことになってしまったが、それを放し、黙り込む彼にこう言った。



「久しぶりに顔が見られてうれしいよ」

「そんなこと思ってないくせに」

「なんでよ。そんなはずないじゃん。なるの受験勉強を邪魔しないように、わざと忙しくして気を紛らわせて……」



あれ。

わたしってば、なにを口走って……

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