第31話

「ここって……」

「はるから聞いた。ひかりが野球観戦してみたいって」


観戦グッズを持った親子や選手と同じユニホームを着た男性たちが目的地に向かってぞろぞろと歩いていく。


「女子、ほとんどいないね」

「そこ気にする?」

「気にはしないけど、いいのかなって思う」

「いいんじゃない、べつに」


なるに言われると、なんだかいい気がしてくるのはなぜだろう。



球場に着いて、中へ入る。

グラウンドでは、選手と思われるひとたちが練習のようなことをしていた。


「うわー、もう始まるの?」

「まだだよ。あと1時間後くらい」



えーっと。

もしかして、その始まる1時間後まで、ここでなるとふたりで待機してるってことなの?



「……ねぇ、3年なのに、いいの? わたしのしたかったことに付き合ってて」


選手たちの練習している姿をぼんやり見ながら、わたしはそう言った。



「ひかりには、おれが一日勉強しなかったくらいで受験に落ちると思ってるの?」

「……野暮でした」

「だろ」

「なるは、どんな高校生活送ってきたの?」

「べつに、なんもない。男子校で冴えない毎日送ってるけど」



あ、やばい。

墓穴掘った、かも。

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