第16話

そうなんだよ。それでさー、とだれかと会話している男子の声が近づいてきた。



「ねぇ、あの声きっとクラスメイトなんだけど。もしかしたらここ入りたいかもだし、そこにいたら邪魔になっちゃう」

「……」

「ちょっと……っ……!!」


この教室の出入り口にさしかかった、わたしのクラスメイトと、他クラスの彼の友人。ふたりがやってきたとほぼ同時に、わたしの唇にやわらかい感触。



「え、須崎……?」

「……っ、う、うわー!!!!」


それがキスだと自覚したとき、クラスメイトとばっちり目が合ってしまった。勢いでわたしに近づいたやつを押し飛ばし、大声を叫んでここを逃走。




やだ。見られた。ていうかなにあいつ。キスするとかわけわかんない。

それに、わたし、初めてだったのに。



置いてきたあいつがクラスメイトとどういうやりとりをしたのかとか、結局教室に寄らずに帰ってしまったから荷物がそのままで、明日提出の宿題も置き忘れてしまったので早く学校に行かなきゃいけない羽目になったとか、わたしはそういうことをすべて考えないようにして、その日の晩を過ごした。

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