第7話  言葉の魔法

<ねぇ……あんた、私をなぜ使役しないの? せっかく契約したのに>


 エリサが、自室のベッドで寝転がって天井を見上げてると、目の前に半透明の風の精霊、アンローラがエリサに話しかけてきた。


 エリサは、無視を決めている。

 エランタがエリサを不思議そうに見た。エランタには、精霊の姿は見えないが気配は感じるらしい。


「エリサ? あなたは精霊使いよね? 精霊が話しかけてるように感じるんだけど……」


「エラ姉様、少なくても精霊は、自分で見つけた精霊ではないわ。銀の森の回し者かもしれない……気を許したらいけないの」


 エリサは、ベッドから起き上がって、机で書き物をしているエランタに言った。


<ひど~~!! 私は、風の王女なのよ! 五百年前にエル・ロイル家の若長と同じ時に生まれた、正真正銘の銀の森生まれだわ! あんたの元人間だったとかいう変わり種の精霊と訳が違うのよ>


「自分で銀の森の回し者だって言ってるし……」


 エランタには、エリサの独り言にしか聞こえない。


「あなたとの契約は反故にするわ。……このの目を通して私を監視しているんでしょう? ティラン!!」


 そうしたら、壁に映像が浮かんで、ロイルの長の館、ティランの部屋の様子が映し出された。


《ほら、ジェド。僕が悪者にされるんですから……》


 守役の人に、文句を言ってる若長が映し出された。

 相変わらずの美貌にエリサもしばし、状況を忘れてうっとりする。


《風の王女のことは、言い出しっぺはジェドなんです。だから、僕の所為って訳でも……》


「男らしくないわね!! こんな大技、あなたが契約してる風の奥方にしか出来ないわ!! とにかく風の王女とは契約を切るわ。ツンケンしてて相性も悪いみたいだし!!」


《折角上位の精霊ですよ……? 第一、奥方や僕やジェドの見ている前で、そんなこと出来ると思ってるのですか》


 吞気な声で笑いかけてくるティラン。


「私のことを忘れたの? 谷の結界を壊して銀の森送りになったのを……力技でやるから、本気出すわよ」


 エリサは、声を低くして頭上に向かって言った。


「風の王女、アンローラ、私エリサーシャ・フレイドルとの契約を強制終了する。銀の森に帰りなさい」


<えっ? ええぇっ!!?? 身体が引き離されるわ!! ひぃ~~>


 半透明の風の王女は、壁に吸い込まれていった。

 その後には大きな穴も空いていたが……


「あなたには、声にも魔力があるのね……」


 エランタの呟きは、エリサには届いていない。

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