第6話  サントス神殿

 その日のうちに、エリサは、母のアリシアだけを伴って西域のサントスの神殿へと旅立った。

 ティランから逃げるようにである。

(絶対に何かを感づかれてるわ……おじ様が育てたっていう人だもの……)


 サントスの神殿に着いたら、アリシアとは別れ別れにされてしまった。


「当り前でしょう。わたしはサントス所属の魔法使いよ。お前は、巫女見習い。レフは警備騎士の強化のための出向よ。それぞれ、所属が違うわ。レフがサントスの町に家を用意してくれたから、週末には会えるわ。大人しく修行に専念しなさい」


 アリシアは、珍しくエリサの顔面の前まで顔を持って来て言った。


「若長との件があったから、わざわざ、遠い西域を選んでくれたのよ。それにね、もうお前は、神殿で生きていくことが運命づけられてしまってるの」


 エリサは、驚いた。


「どうして?」


「光の神と邂逅してしまったわ。しかも、神に天界に来ないかと誘われたなんて人物を神殿が離すと思ってるの?」


「嫌かも……」


「私とレフが呼ばれたのも、もしもお前が何かしでかした時に責任を取らせるためよ」


 エリサは、ガーンである。

 今まで、谷の中でいくらお転婆なことをしても、怒られるのは大叔母のミジアからだけだった。今度からは、責任が父母にかかっていくようである。



 *


 サントス大神殿は、大陸西部の沿岸三古王国の一つ、城塞国家アルテア王国の城塞の外に作られた神殿である。約、40年前、古王国の一つドーリアが、隣国のヴィスティンに攻め込まれ、首都のアスタナシヤが乗っ取られた。世の中が一時的に混乱した頃、一人の賢人が現われてた。サントスに人々の拠り所になる神殿を作ったのが起源である。

 歴史は新しいが、メルクリッド賢者が善く人を人を導き、サントスには良き人材が集まっていた。


「エランタ・シーモアよ。あなたの教育係兼ルームメイトよ」


 エランタは、アルテア王国の王の庶子らしい。それで神殿で生きていくことを余儀なくされ、今では、10代後半で中位の上クラスの巫女の位に就いていた。それはエリサも同じで、最初に渡された巫女の服に撒く腰紐の色で階級が分かるのだが、始めは誰もが真っ白から始まる。

 エリサのところに来た巫女の服の腰紐は、初めからえんじ色だったのだ。


「なんとなく、事情は聞いてるけど、ここでは修行者の一人よ」


 エリサは、作り笑顔で答える事しか出来なかった。


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