第5話  秘密を探る若長

「いきますよ」


「どうぞ」


 ティランが、破魔の剣(精霊との契約を切る剣)を振り上げて、エリサの頭上ギリギリを掠めた。

 そのとたん、エリサの前に半透明の風の騎士が、ポトンと落ちてきた。

 北の地方で、一時的に神の力で人間の器を得たリカルドは、風の奥方の力を最大限に使って、エリサの天界行きを阻止したために、自分の魔力もかなり消耗している。記憶を失うことを嫌がって精霊に戻ったが、力を一時的に失ってるのだ。


「風の騎士の変わりに、『風の王女』アンローラと契約しててください。ちょっと、癖がありますが上位の精霊ですよ」


 ティランは、風の奥方が連れてきた半透明の気の強そうな風の王女をエリサに紹介した。


<あんたが、エリサ-シャ・フレイドル? あたしは、アンローラ、よろしくね>


「ティラン……精霊は、自分で見つけるわ」


「ダメですよ。あなたは、神殿の監視下に置かれてる身なことを忘れていませんか? 風の王女は、ロイル家との繋がりの深い精霊です。あなたの力なら、アンローラとうまくやっていけるでしょう」


 ティランは、たんたんと話す。

 エリサは、口を尖らせている。面白くないのだ。


 しかも、勝手に精霊に名前を教えられてて、勝手に契約されてる。


 腑抜けのリカルドは、風の奥方が回収した。今は、ティランの頭上にリカルドを抱いた風の奥方がいるわけだ。


「それより……」


「何?」


「祖神に何を貰ったんですか?」


 エリサは、ドキリ!!


「な……なにも貰ってないわよ?」


「本当に!? ジェドは、エリサが何か隠してると言ってましたけど」


 また、あのおじさんか!! と内心エリサは、辟易してした。

 父の親友だと言う、若長の守役。当代一の予見師。SSSランクの大地の魔法使いだ。


「何かを聞いたとか?」


「なら、なんなの!? 別に天界に誘われたこと以外はないわよ!!」


「それで、祖神は諦めたのですかね? 本当に……?」


「何もないってば!!」


 エリサは、ティランの前から逃げ出した。頭上の精霊がリカルドから、風の王女アンローラに変わっていたが。

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