だ けど私は
第13話
美奈ちゃんは目を細め私を疑っている。
「……それ、本当?」
「うん。本当」
「夢とかじゃないよね?」
「夢じゃない……」
昨日あったことを鮮明に思い出す。
「ゆきくんが何もなかったみたく歩くから私も一瞬、あれは夢か?
って思ったんだけど」
ゆきくんの去り際の言葉がふと、思い出される。
「日高くんに気をつけてって、言ってたし」
昨日はそんな訳で結局ゆきくんの部屋にはお邪魔できなかった。
「あー……。どーしよー……」
「何が?
蘭はどうもしなくて良いんじゃないの?」
美奈ちゃんはパンを食べながら私に言ってきた。
「ただフクの側にいて言われた通り、日高に気をつける。それだけじゃん」
どうして美奈ちゃんはこうも、大人な意見をスラスラと言えるのか。
私がため息をつくと丁度、日高が教室に入ってきた。私を見て、手を振る。
「……うざっ」
「眞冬じゃないけど、あいつも本当に鑑賞専用だよねぇ」
その後ろから眞冬ちゃんも入ってきた。
「まふゆ、おはよー」
「ん。おはよ」
そして紙を持って私にみせてくる。
「ドレスのデッサン、出来た」
それを見て美奈ちゃんは感心の声を上げる。
「まふゆ、本当にこのことに関しては天才的だよねぇ」
「蘭ってなんか想像力を掻き立てるんだよね」
そこに都ちゃんも登校する。
「おはよ、都。見てよ、これ!まふゆが書いてきた!」
都ちゃんがそれを見て「すごい」ってビックリしてる。
「まぁ、都も相当、私の想像力を掻き立てるよね」
「……え?ちょっと、私は?」
「ごめん」
そしてまふゆちゃんは私の顔を見て聞いてくる。
「だからさ、蘭。
今日布とか一緒に買いに行かない?」
「え?もう買いに行くの?!」
「うん。
七月入ったらスグに作り始めたいんだよね」
どーせ、ギャラスタには行かない予定だし。
一人で帰るのは嫌だし。
「美奈ちゃんと都ちゃんは?」
「私は今日、部活だー」
「私も今日生徒会があって」
そんな訳で私はまふゆちゃんと二人で出かけることになった。
「蘭と二人とか私、相当責任あるじゃん」
「え?なんで?」
「誘拐とかされそうだから」
都ちゃんはそんな眞冬ちゃんに「縁起でもない」って眉をひそめた。
「だって、じゃん?
都は武道の達人だし、美奈は、……ねぇ?」
「いい加減ぶっ飛ばすよ?」
昔から良く言われる。
誘拐されそうとか、不審者に気をつけてとか。
ゆきくんも「気をつけて」っていっつも言うし。
だから、言われ慣れちゃって。
慣れとは多分恐ろしいものなのです。
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