ギター :日高貴志

第10話

気にくわねぇ。


全てが気にくわねぇ。



「福本先輩のおかげで春日のこと誘えました!ありがとうございました!」



「いえいえ。


俺こそ蘭ちゃんにチケット渡してくれてありがとう」



福本幸也の全てが本気で気にくわねぇ!



「じゃ、練習しようか」


「はいっ!貴志、頑張ろうな」


「……うん」



まず福本幸也は笑顔がキラキラ過ぎる。

裏があるんじゃねーかと疑問に思う程のキラキラだ。



にも関わらず!


ヒロはメチャメチャこいつを尊敬してる。



「福本先輩はマジでギター、上手いだろ」



そう、ギター上手いんだよ。



そこも気にくわねぇんだよ!



しかも昨日、俺がちょっとフラッとしてる間にヒロの恋愛相談に乗りやがって、米倉にチケット渡させやがった!



そうなんだよ。



米倉蘭の彼氏なんだよ!



「日高くん?話聞いてた?」


「あ、すみません」


「ボーッとしてたらダメでしょ」




俺は米倉のことが好きだ。



簡単に言えば一目惚れだ。



黒目がちな二重の目も、柔らかそうな髪の毛も、長い長い睫毛もツボだし見たことないくらいの美少女だからだ。



見ちゃったらそりゃ好きになるだろ。



頑張って色々話しかけたし委員会も同じにした。



美化委員なんて一番面倒な委員会にも我慢して入った。



そしたら、この福本幸也がその委員会の委員長だった。



米倉蘭は福本幸也には有り得ないくらいデレデレだ。


すっげー、ウザくて何回か福本幸也の前で米倉蘭に積極的にアプローチしたりしてみたこともある。



しかしこいつは顔色一つ変えない。



俺のことなんてちっとも敵視してない感じがこれまたかなりムカつく。



「やっぱり二人のハモりが何回やってもズレてくね」



福本幸也がため息をつきながらうーん、と腕をくんだ。



「ズレてるって分かってる?」


「イマイチ分かんないです……」



ヒロの言葉に福本幸也は自分のギターを取り出す。



「じゃあ、俺がまず日高くんのパートを弾くから合ってる状態を知ろう」



そして福本幸也は俺のパートを弾き始める。


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