送る言葉を贈る
斗花
第1話
体育館に紅白幕を飾りながら隣で桜がため息をついた。
「明日卒業するのに、なんで準備しなきゃならないの?」
「生徒会だからです」
桜を見て、生徒会長の義旭が相変わらず冷たく言う。
文化祭が終わったら、とりあえず会長や副会長は入れ替わるけれど、三年生も一応生徒会として在籍しておく。
体育祭とかも少しは手伝う。
「卒業式がめちゃめちゃになっていいなら、手伝わなくっても構わないですけど」
義旭の言葉とほぼ同時に桜が幕を乱暴にはりおえた。
「終わりましたー」
私はそんな桜の横で静かに椅子を並べる。
義旭は一歩下がって桜のはった幕を眺める。
「曲がってます」
桜を見下ろして言う。
「そんなの誰も分からないですけど」
この二人は何だか、仲が悪いんだか、良いんだか……。
「ねぇ、りさ!曲がってないよね?!」
桜の言葉に私も一歩下がって幕を見る。
「……曲がってる」
私が答えるとわざとらしくため息をついた。
「直せば良いんでしょ。面倒くさいなぁ……」
そう言いながらも桜はいつも仕事を早く、的確に終わらせる。
それに比べて私、
「あー!りさ先輩!椅子、一つ多いです!」
「えっ?!うそ!ごめん、はやて!」
仕事は遅くてドジばかりです。
私、美山梨沙はこの三年間、高校で生徒会を務めてました。
「はい。どーですかー、会長」
さっき幕を張っていた山本桜は副会長で。
「良いんじゃないですか?」
ここにいる伊達義旭は今は会長だけど、私が会計だった頃はまだ副会長だった。
私達の代の会長は-
「お待たせっ!」
「竜せんぱーい!」
私の隣にいた
私達の代の会長は
「竜、遅い。
あんたが遅いせいで義旭がすごい偉そうだったんだから」
「竜先輩、遅いです。
先輩が遅いせいで桜先輩が本当に騒がしかったんですから」
桜と義旭が睨み合う。
「悪い、悪い!
答辞確認してたら遅くなっちゃってさ」
そして竜が私の隣に立った。
そんな義旭に桜は「うっざー……」と呟きながら鞄を持つ。
「じゃ、帰る。明日は答辞ファイト」
そして桜は体育館の前に座ってた義旭の兄の伊達くんの所へ笑顔で寄って行った。
「兄さんはあんな女のどこに惚れたんだか」
義旭もそう言いながら立ち去る。
「義旭くーん!」と叫ぶ彼女の方に向かって、すこーしだけ小走りで。
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