第2話 崎森女学院
独特な牛の鳴き声と共に、私は、ようやく目を覚ます。
変わった目覚まし時計だけれど――これをプレゼントしてくれたのは、前の学校にいた友人だ。
わざわざ引っ越す私の為に、その子が選んでくれた物。
使わないのは、かわいそうだし、別に困っているわけでもないからいいけんだけれど――。
ちょっと、寝起きが複雑な気分になるのは、何でだろう?
と、そんなことを思いつつベットから下りた私は、いつものように、ブラシで髪の毛を整える。
それにしても――懐かしい気分だ。
小さい頃に住んでいた以来だから――十年ぶりとかかな?
「これで、よし」
と、鏡の中にいる、小柄で特徴もない地味そうな自分の姿を見て、他におかしなところがないか確認した私は、自然と自虐的な笑みをうかべてしまう。
はぁ~。
鏡を見ないと、髪の毛を整えられないのって、すっごく嫌。
一秒でも、こんな姿を見つめたくないよ。
「楓~。朝ごはんできているよー」
「はーい。今行くー!」
と、下の階から聞こえたおばあちゃんの声に、すぐに答えた私は、懐かしい階段をゆっくりと降りていく。
「おはよう、おばあちゃん」
「おはよう楓。よく寝れたかい?」
と、朝のあいさつをしつつ、リビングへと入ると、いつもと変わらずの優しい顔で、おばあちゃんが迎え入れてくれた。
両親の転勤が多く続き、その度に転校を繰り返し続けていた私――萌木楓は、高校二年の春。
やっと、その流れを断ち切る決心をした。
というのも、できることなら家族三人で過ごしていたかったのだが――さすがに、転校する先々で馴染むのを繰り返すことに、正直、嫌気が差してしまったのだ。
そんな私の心は、両親もそれとなく察してくれたらしく、母方の祖母――目の前にいる、少し腰の曲がったキクおばあちゃんの家で、成人するまで過ごしてはどうか?
と、提案され、私は、すぐにその提案を受け入れた。
キクおばあちゃんと二人で過ごすのも嫌いではないし……。
何より、昔住んでいたこの藤崎市に戻ってこられる。
まったくもって、嫌な要素など、何もない。
「ほら楓。お味噌と、焼き魚だよ。しっかり、食べていきな」
「うっ、うん……でも、朝からご飯は、ちょっと重いかな?」
昔から朝ごはんは、小さなパンを一つしか食べてこなかった私からすると、このテーブルに並べられている食材の数々は、正直厳しい。
だけれど、おばあちゃんがせっかく作ってくれたのに、それを食べないというのも、酷いと思うし……。
がっ、頑張るしかないかな?
と、ゆっくり箸を口へと運んでいると、何故か呆れたため息をつかれてしまう。
「楓。しっかり食事は、食べないとダメだよ? 最近の子どもは、やれダイエットだ、やれ少食がかわいいだ、言うけれどね……食べないと身長も伸びないし、病気になっちまうんだから」
「身長って――私、もう十六だよ? これ以上伸びないよ」
「なに言ってんだい。若い内は、成長するもんさ。そうすれば、胸だって大きくなるんだから」
……へっ?
ちょっ!
なんでおばあちゃんが、私のその悩みを知っているの!?
「なっ、なんでそのこと知っているの!? おばあちゃん!」
「なんでって、お母さんからきいたからに決まっているでしょう? あんたが、みんなより小柄なのを気にしているのも、ぜ~んぶ。おばあちゃんは、知っているのさ」
おっ、お母さん~。
そんなこと、おばあちゃんにわざわざ、言わなくてもいいのに!!
と、朝からまさかの精神攻撃を受けてしまった私は、少し複雑な気分のまま、豪華な朝ごはんをお腹の中へと入れ込むのだった。
東には、雄大な自然。
西には、キレイな海岸。
それが、今私が住んでいる都市――藤崎市という町だ。
春や秋には、山間部が賑わい、夏には、海岸が人気スポットとなるこの都市は、政令指定都市まではいかなくとも、それなりの人口を誇っている。
周囲の家からしたら、少し古い木造建築であるおばあちゃん家からでた私は、早速スマホを片手に、学校への道のりを検索しつつ向かう。
それにしても……前の学校は、ちょっとした山奥にあったから、こんなに、マップがごちゃごちゃしているのを見るのは、新鮮な気分だな~。
「ここら辺も、昔住んでいたのに……ずいぶんと、変わっちゃった……」
ここに引っ越して来てから、周辺を散歩がてら歩き回ってみたけれど――昔とは、全然違う。
スーパーマーケットだった場所が、いつの間にマンションになっていたり、空き地だった場所に、ショッピングセンターができていたり……。
さすがは、都会。
と思う反面、昔遊んだ想い出の場所が、消えてしまっていたりしたことには、正直心がチクリとしちゃった。
そんなことを思いつつ、スマホに表示されている進路を辿っていると、何やら重そうな荷物を担いでいるおばあさんの姿が、視界へと入りこむ。
――あの量を、階段の上まで持っていくつもりなのかな?
いくらなんでも、一人では、厳しいと思うけど。
と、一生懸命に荷物を運んでいる後ろ姿を見ていた私は、咄嗟にそちらへと足を向けてしまう。
はっ!?
いや、ダメダメ!
ダメだよ楓。
それは、もうやめるって決めたはず!
小柄で地味な私だけれども、それでも――中学に入るまでは、実は、胸を張って、他人に誇れるところがあった。
それは、困っている人がいれば、必ず助けること……。
その一点だけに関しては、誰にも負けない長所だと思っていた。
きっかけは、助けた子の笑顔だった。
誰にも話しかけてもらえず、一人で遊んでいた子に、声をかけたあの日――。
次第に心を開いてくれたその姿が、私の中では、とっても素敵な出来事になったんだ。
だから、困っている人がいれば、必ず手を差し伸べる。
これだけは、大事に心がけてきた。
そのかいもあって、小学校時代は、転校する先々で、クラスの中心的人物だったと言っても、おかしくない程、みんなから頼られていた。
というのも、先々で、困っている人や悩んでいる人に、自分から関わりにいっていたから、自然とそうなったんだと思う。
でも……。
それも、中学にあがるまでの話……。
人に手を差し伸べるってことは、見方を変えれば、善意のお節介だ。
周囲から避けられている子に手を差し伸べれば、その子と同じ扱いを受ける。
酷ければ、その子から対象が私へと変わるだけでなく、その子すらも、私を遠ざけ始めてしまう。
それでもと、お節介を続けていけば、どうなるか……。
行き着く先は、空気の読めないウザいやつ。
と、つい最近の事を思い出してしまった私は、震える腕を、自身の胸へと引き寄せる。
そうだよ。
あのおばあさんだって、頑張って自分で運んでいるんだ。
もしかしたら、年寄り扱いをされたと、怒るかもしれない。
重そうな荷物を持ちつつ、ゆっくり階段をあがるおばあさん。
その脇を、サラリーマンの男性が、目で追いつつ、通り過ぎていく。
っ!!
そこが、私の限界だった。
「あっ、あの!」
あっ、やっちゃった……。
と、そう思った時には、私は、既におばあさんの近くへと駆け寄り、声をかけてしまっていた。
「はっ、はい?」
「あっ、その。えっと……もっ、もし良かったらなんですけど。おっ、お手伝いとか、さっ、させてくれたりとか、しますか?」
うっ。
もう! 私のアホ!!
声をかけたんだから、どうしてすんなり言葉を繋げられないのよ!!
と、顔が熱くなる中、自分に説教をしていると、目の前のおばあさんは、何度かまばたきをした後――。
「いいんですか? 手伝ってくれるとありがたいですけど――お姉さんも、重いの苦手じゃない?」
と、にこやかに笑いつつ、言ってくれる。
あっ!
やった! 迷惑な顔をしていない!!
「まっ、任せてください! 重いの得意ですから!!」
ふふっ。
やっぱり、誰かの為になることをするのって、とっても気持ちいい!!
「こっ、これで! だっ、大丈夫! で、ですか!?」
「あらあら。本当にありがとうね~。重かったでしょう」
「いっ、いえ。全然、まったく……」
正直、キツい。
でも――何とか階段の上まで運べたから、良かった~。
と、肩で息をつきつつ、おばあさんへと買い物袋を渡すと、笑顔で受け取ったおばあさんは、そっと、ハンカチを差し出してくる。
「ありがとうね~。よかったら、これで汗を拭いてちょうだい」
「へっ? あっ、いえ! 気にしないでください。ハンカチなら、自分のを持っていますから」
と、鞄の中を探りつつ、おばあさんへと言う。
けど――あっ、あれ?
あれれ!?
おかしい……きちんと、家を出る前に入れたはずなのに!
と、ポッケとか触りつつ確認するが、どこにもハンカチがない。
うそっ!?
えっ、どっ、どうしよう!?
おばあさんを納得させる為に、ハンカチを持っていることを、アピールしようとしたのに……。
これじゃ、渡す口実を余計に与えちゃう!
と、ワタワタする私に、一度首を傾げたおばあさんは、柔らかい笑みを浮かべると、ハンカチを再度私へと突き出してくる。
「気にしないでちょうだい。むしろ、これくらいしかお礼をできなくて、ごめんなさいね」
「えっ!? いや、そんなことないです! あの、こちらこそ気にしないでください」
と、私が両手を前に出しつつ、おばあさんのハンカチを断ろうとする――と。
スッ。
と、私達の横から、新たなハンカチが突き出される。
――へっ?
「もしよかったら、こちらをどうぞ。私は、二枚持ち歩いておりますから」
と、そう言いつつ、私へとハンカチを差し出してくれたのは、柔らかな笑顔をうかべた、背が高く、スタイルのよい黒髪ロングの女子生徒。
その圧倒的な美少女然とした姿に、呆気にとられてしまった私は、慌ててその申し出を断るけど――。
「ふふっ。気にしないでちょうだい。同じ学友……気になるようでしたら、明日にでも洗って返してくだされば、全然構いません」
「えっ? 同じ?」
あっ!
本当だ……この人、私と同じ制服を着ている。
クスクスと、口元を手の平で抑えつつ笑う女子生徒さんに、だんだん顔が熱くなってくる。
うぅ~。
同じ学校の人に、変なところ見られちゃった。
終わった……。
「あら? お友達ですか?」
「えぇ。そうなんです。ですので、お気持ちだけいただいておきます。おばあ様」
「あらやだ。おばあ様なんて! でも、本当に助かったわ~。ありがとうね、お姉さん」
「あっ、はい」
いそいそと、受け取ったハンカチで、私が汗を拭いていると、何やら話がついてしまったらしく、最後に頭を一度下げたおばあさんは、その場から去って行く。
えへへ。
ありがとう……か。
やっぱり、あの笑顔を見るのは、好きだな~。
「それにしても……登校初日だというのに、大変ね」
「へっ?」
「あなた、転校生の萌木楓さんでしょう? まさか、転校初日にボランティア活動をしているだなんて」
「あっ、あの。どうして、私の名前を?」
「そういえば、自己紹介をしていなかったわね。私は、風見塔子。あなたの通う学校の、生徒会長をしている者よ」
「せっ、生徒会長さん!?」
うっ、うそ!?
登校初日で――しかも初めて話した同じ学校の生徒さんが、生徒会長って。
そんな偶然って、あるの!?
「ふふっ。そんなに可愛らしく驚かないで。生徒会長といっても、別に特別な権限なんてないただの生徒よ。少しだけ――先生方との距離が近いってだけの、ただの生徒よ」
かわっ!?
て、そうじゃない!
こっちも、名乗らないと!
「はっ、初めまして! えっと、今日から通うことになった、萌木楓です」
「えぇ、よろしくね。それじゃ、時間の余裕もないことだし、行きましょうか。詳しいお話は、歩きながらにしましょう?」
と、そう言った風見さんは、ハンカチを差し出した時のように、大人びた雰囲気で微笑むと、歩き出すのだった。
崎森女学院――。
それが、私の通う高校の名前だ。
その名の通り、生徒は女子しかおらず、中学時代の私の事を知っていた両親が「ここなら、酷いことをしたりしない」という理由で、選んでくれたけど……。
「おはようございます。会長」
「えぇ。おはようございます」
「あっ、風見会長だ」
「うわぁ~。いつみても、美人だよね~」
うぅっ……風見さん。
見た目が良すぎるから、注目の的だよ~。
でも――同じ生徒の人達からもそう思われているってことは、やっぱり、美人なんだ。
と、すれ違う生徒に、毎回笑顔で挨拶を返し続けている隣の風見さんを、見上げつつ思っていると、私の視線に気がついたのか――。
柔らかい表情で、微笑んでくる。
すっ、すごい……。
同じ女性なのに、ドキドキしちゃった。
これが、生きている世界が違うってやつなのかな?
なんて、自身の特徴のない身体を見つつ、ため息をついていると――。
「宮崎茜さん! 何度言ったら、わかるんですか?」
と、そんな声が聞こえてきた。
なんだろう? あの、校門に立っている人。
腕章をしているけど――風紀委員?
「学院では、イヤリング禁止! 特別な理由がない限り、頭髪の染色も禁止!」
「あー、はいはい。ごめんなさ~い」
「ごめんなさいって! あなた、既に四回目よ! 今年に入って、四回目!」
うわわっ!
大人しい人が多い学園だって、聞いていたけれど――あの人。
髪の毛は、茶髪だし、鞄には、ぬいぐるみがたくさんついているし――。
わっ、私の苦手なタイプかも……。
と、校門前で注意されている女子生徒を遠くから見ていると、風見さんに肩をたたかれる。
「ごめんなさい。少し、待っていて貰っても、いいかしら?」
「あっ、はい」
どうしたんだろう?
と、私が思っていると、風紀委員の腕章をつけている人の所へと向かった風見さんは、一言二言話をすると、何故か茶髪の生徒と共に、私の所へと戻ってくる。
えっ!?
「お待たせ、楓さん。さて、行きましょうか」
「いや~、助かったよ。さすが、生徒会長って感じ? 何て言うんだけ? ヤギの一声?」
と、さっきまで注意されていたのに、全然反省している様子のない女子生徒さん。
そんな彼女へと、風見さんが一度視線を鋭くし、睨みつけると、呆れたようなため息をつく。
「それを言うなら、
「うん? そういえば、誰あんた?」
うっ。
どっ、どうしょう……。
こういう時って、初めが肝心だって言うもんね。
「はっ、初めまして! 萌木楓といいましゅっ!?」
かっ、噛んだ~!
もう、何でこんな時に!!
「ましゅ?」
「ううん! 彼女は、萌木楓さん。今日から、転校してきた子よ。茜さんと同じクラスのね」
「転校? あれ? そんな話してたっけか?」
「確実にしているはずよ。さぁ、楓さん。行きましょう」
と、私の肩に手を置きつつ、歩きだす風見さん。
うぅ~。絶対に、顔が真っ赤になってるよ、私!
「ちょいちょい。あたし、まだ名乗ってないんだけど?」
「歩きながらでも、それはできるでしょう?」
「まぁ、そうだけどさ。あっ! あたしは、宮崎茜。同じクラスみたいだし、よろしくね。転校生の――えーと。楓ちゃん?」
風見さんと並んで歩くと、少し後ろを歩いていた宮崎茜――茜ちゃんが、首を傾げつつ言ってくる。
「あっ、あの。こちらこそ、よろしくお願いします」
「うん。てか、ちょっとかたくない? もっと、肩の力抜きなって。あたしら、同い年なんだしさ」
「茜さん。誰も彼もが、あなたみたいに明瞭快活って、わけではないの。無理強いは、よくないわ」
「めいりょ? いや、会長も肩の力抜いた方がいいんじゃない? そんなんだから、高なんとかの花だの、窓際のなんとかって言われるんだよ」
私のフォロー? をしてくれた風見さんに対して、やれやれという、ため息をつくと、気軽に風見さんの肩をたたく茜ちゃん。
それに対して、風見さんは、呆れたようなため息をつくと、その場に一度立ち止まり――。
「私のことを気にするよりも、もう少し、自身の事に気を配ったらどうかしら? 髪の色に関しては、百歩譲って良いとして――イヤリングに関しては、どうとでもできるはずよ」
と、目を細めつつ、茜ちゃんへと注意する。
が――。
「あー、はいはい。そうですね」
と、まったく気にもしないで、軽く受け流す茜ちゃん。
すごい……私なら、背筋が伸びそうな視線なのに。
「やめる気がないなら、もっと頭を使いなさい。それこそ、登校時には、はずしておくとか――ね」
と、言いたいことは、言い切ったとばかりに、茜ちゃんの返答を待たず、風見さんは、歩き始めてしまう。
その言動に、小さく舌をだした茜ちゃんは、私へと視線を向けると、両肩を少しあげる。
「今のきいた? 生徒会長が、率先して校則破りの方法教えてくれたんだけど。こんな学校だけど、とりま、ようこそ~」
えっ?
「ふっ、ふふっ」
あまりにも意外な言葉に、私が、堪えきれず笑ってしまうと、茜ちゃんも、口角をあげる。
「何をしているの? 行くわよ二人とも」
「ほいほーい」
「あっ、はい」
崎森高校は、上空から見ると、キレイな四角形の作りとなっていて、その中央には、大きな一本の木が植えてある。
その為、もしも校内で迷ったりした際は、その木を目印にすれば、必ず元の場所に戻れる――らしい。
そんなことを、茜ちゃんを連れつつ、校内を歩きながら教えてくれた風見さんは、職員室の前へとたどり着くと、私の方へと振り返る。
「移動教室なんかについては、他の生徒についていけば、わかると思うわ。それに、もしもの時は、茜さんもいるから」
「まぁ、同じクラスだしね。それくらい、全然教えるよ」
「えぇ、くれぐれも、よろしくね。本当なら、私が全て教えてあげたいところだけれど――クラスが違うから、どうしても……ね。それじゃ、私は、ここで失礼するわ」
「あっ、あの。いろいろと、ありがとうございました」
と、風見さんとは、どうやら、ここでお別れをするような雰囲気だった為、せめてお礼だけでもと、そう伝える。
すると、優しく微笑んだ風見さんはーー。
「どういたしまして」
と、そう言うと、私達のもとを去っていく風見さん。
「それじゃ、あたしも先にクラスに行ってるわ。がんば」
と、隣にいた茜ちゃんも、手を振りつつ、その場から去っていく。
あっ、茜ちゃんも行っちゃうんだ……。
でも、そうだよね。
私は、クラスに行く前に、ここに来るように言われていたけれど――時間的に、もうすぐホームルームが始まっちゃうもん。
さっきまで賑やかだったからからな?
ちょっとだけ、寂しいな……。
などと思いつつ、職員室の扉をノックしようとした瞬間、突然扉が開かれる。
「あっ……」
「……」
と、先生が出てきたのかと思えば、職員室から出てきたのは、私と同じくらいの身長の女の子だった。
そんな彼女は、私の顔を数秒無言で見つめると、キレイに編みこまれている三つ編みを振りつつ、その場からたち去っていく。
なっ、何も言えなかった……。
ごめんなさいとか、おはようとか。
……あれ?
「さっきの人……何処かで見たような」
そんな気がしたけれど、校内に響く予鈴の音で、すぐに担任の先生へと話しかけにいかなければならず、彼女のことを考える時間が
、なくなってしまったのだった。
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