第6話

「なるほどな。それじゃあ、俺達はその商人を探ってやるヨ」


「本当か!そりゃ助かる。ほら、お前達も頭を下げろ!」


ハビースさんとエントさんがイーグルさんに頭を押さえつけられて、無理矢理頭を下げられているよ。


不自然な体勢で押さえつけられてるから、首がもげそうになってるけど……大丈夫かなぁ。






「カーツ、ちょっと手綱を頼むよ」


「はーーい」


イーグルさんが来た日から4日後。わたし達は街道を次の目的地に向かっていた。


「やっぱり、貴族って野郎達は信用出来ねえってこったナ」


「そうね。まさか街の防衛を担う伯爵の自作自演だって分かった時は驚いたわ。


商人を仲介にして街のチンビラを使った巧妙な手口だったってイーグルさんが言ってたわね」


「今回はカーツのお手柄だったんダ。


カーツがマリーと仲良くしていたこと、素早く動いたことが事件の解決に繋がったって領主様も喜んでいたゾ」


わたし何もしてないんだけどなって思いながらも、この街の役に立てたんなら良かったよ。


で、今回の事件の顛末なんだけど…………





イーグルさん達がテントに来た翌日、いつものようにやって来たマリーちゃんはひどく慌てていた。


マリーちゃんはスラム近くに住む8歳の女の子で、よくテントに遊びに来てくれる大人しい子だったので、その日の様子はかなり異様に思えた。


「お母さんが大変なの!急に具合が悪くなったみたいで!お姉ちゃん助けて!」


口早にそう言ってわたしの手を引っ張るマリーちゃん。


何か胸騒ぎがしたわたしは、そばにいたヘイトさんにお願いしてマリーちゃんの家までついてきてもらった。


そこには興奮状態のマリーちゃんのお母さんがいて、部屋で暴れてた。


ヘイトさんにお願いして取り押さえてもらったんだけど、いつもの温和な人とは同じ人だとは思えなかったのよね。


しばらく押さえつけてたら大人しくなったから、事情を聞いてみたら、マリーちゃんがスラムからもらってきた元気がでる飲み物を飲んだそうだ。


マリーちゃんがスラムの入口で、お母さんが風邪気味だと言うと、大人の男の人がくれたらしい。


それを飲んだら急に苦しみだしたから、慌ててわたしのところに助けを呼びに来たって。


そこへわたし達を心配したミーシャさんがやって来て、その薬を一嘗めして、これが強い興奮剤だって気付いたのよ。


それは別の街で麻薬と呼ばれてた薬で、幻覚と興奮に襲われるらしい。


ミーシャさんはその薬を持ってラック座長のところへ行く。


すぐにミーシャさんとラック座長がやって来た。


マリーちゃんに案内してもらってその薬をもらった場所へと行ってみる。


ラック座長の顔を見た途端、ひとりの男が逃げ出した。


座長とヘイトさんが急いで追いかけ、その男を捕らえると、イーグルさんの元へと連れて行った。


取り調べるとその男は大手商会の番頭だったそうだ。


ミーシャから薬の症状を聞いたイーグルさんがその男を調べると、スラムにこの薬をバラ撒いたのはこの男だったんだそう。


それでイーグルさん達はその商会へと押し掛けたんだけど、番頭が勝手にやったこととけんもほろろに言われたんだって。


この商会は前から伯爵との癒着を疑われてたそうだから、イーグルさんも内偵してたんだけど、自分達守兵の監督官が伯爵だから、苦々しい思いをしてたそうだ。


今回番頭の犯罪が明るみになったから、これ幸いとイーグルさんは店主に有無を言わせず、強硬に押し入ったら、出るわ出るわ、不正薬物のオンパレード。


更に帳簿を調べると、莫大な売上の半分近くが伯爵に献金されていたらしいの。


イーグルさんはその証拠を持って領主様の下へ駆け付け報告。


伯爵が事情を知るまでの間に事件は解決したんだって。


どうやら、伯爵は街の守備予算の一部をネコババしてたみたいで、街に騒動を起こして守備予算を増やそうと企んでたんだそう。


商会からの献金と守備予算のビンハネの一石二鳥を狙ったみたいだけど、悪いことは出来ないもんだね。

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