第13話

「……ククッ……ハハハッ、」





そう自覚した途端、急に笑いが込み上げてきて俺は思わず声を漏らす。


何が可笑しいのか、自分でもよく分からない。




───ただ、胸の奥から沸々と湧き上がってきた黒いもやが大きな闇となって、そのまま俺を飲み込んだような気がした。





「…………せ」


『……』


「───今すぐ逢沢結寧を探し出せ」





俺は電話の向こうへそう告げる。



そして要件を言い終わると返事を聞くことなく電話を切って、体を起こした。




……さっきまで鉛のように動けなかったはずの自分の体が、今は嘘のように殺気立っている。




寝起きの髪を適当にかきあげながら、俺は側の棚に飾ってある彼女の写真へと視線を動かした。






「……結寧」

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