第25話夏希、帰還

「何?昌景、ボーッとして。」

「別に。昌豊。」

昌景と昌豊は、特に親しい間柄だ。

「お前、夏希殿に惚れてんの?」

「惚れてねーよ。」

「俺にまで、隠すことねーよ。」

「むちゃなあいつが恨めしい。」


岐阜城から甲斐に戻る夏希とドラミ。


「もうすぐね。ドラミ。」

『うん。僕、夏希ちゃんのこと心配したんだよ。』

「ごめんね。ドラミ、ありがとう。」

『いいよ。』


躑躅が崎館。


「信玄。信長の寝首を、掻くどころか、武田守護神とバレてしまいました。ですが、どういうわけか、私を解放し、武田とは同盟したままでと言ってました。」

「夏希殿が無事ならよい。うつけ、何を考えてるのか、、、。お疲れじゃろう。みはたたてなしの部屋でくつろぎなさい。」

「はい。」


夏希は、みはたたてなしの部屋に戻って、一息ついた。

 

バンッ。


「夏希!」

「昌景。」

昌景の切れ長めの目が夏希を見つめる。

「どこもなんともないか?」

「うん。」

「織田信長に変なことされてないか?」

「うん。」

「良かった。」

昌景は、安堵した。

「まったく、お前はむちゃにも程がある。バカにつける薬はねーな。バカもいいところだ。バカはバカなりに考えたんだろうけど。」

「ちょっと!バカバカ連呼しないでよ!」

昌景は、そっと夏希を抱きしめる。

「昌景、、、。」

そして、夏希の頬をそっとつねる。

「バカ。」

「もうっ!」 

「今、上杉謙信に備えて、川中島近くに海津城を築いておる。」

「東を攻めるには、上杉謙信と戦しなくちゃいけないもんね。」

「そうだ。」

「私、勘助のおっさんに兵法の勉強させてもらう。」 

「それはなにより。」

「勘助のおっさんのところに行ってくる。」

「分かった。」




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