第6話

「ランファン女史、口を挟んで良いですか?」


「どうぞ、サクラ」




歌うようにそう言って、浮かべるランファンの薄ら笑いは、私にとって威圧感を負わせるもの以外の何者でもない。




「さっき、私達って言いましたよね? 後、誰ですか?」


「そんなのあんたのマスターに決まっているでしょ。呼ぶ?」



ちょっと、考えて辞めた。


もし、よしんば、今回の事を聞き縋っても、私は抗議出来る程、マスターに強く言えないビッチだ。


下手に勘繰られてハルキの所に行く障害になり得る位なら、いっそ、接触何てせずに行けば良い。


『不可』だと分かり切っているなら、最初からない方が『得』である。



「呼ばないで下さい」


「了解。じゃぁ、今日の事は、後で議事録形式で報告しておくわ」



議事録?


え、は?


バッと辺りを見渡し、監視カメラ3台、周囲にパソコンに向かってカタカタと文章入力しているらしき、秘書っぽい女性が1人。





(最初、お茶を出そうとしたが、散らかるから良いとランファンさんに窘められていた人)




録音か、文章記録か?


脳裏でそれが駆け巡るのを、そのまま言葉にした。



「映像音声でですか? 文章記録ですか?」


「あぁ、両方」



クッソォオオオオオ!


こんな状況を保存するなぁあああ!




……映像音声・手入力による文章データは傍受したデータをそのままサーバー保存するデュアルタイム仕様か?



だとすれば、今までの情報を消去する事は、ホストデータを持っているサーバ毎必要になるだろう。


でも、取敢えずだ。



私は、サイレンサーも付けてない『ブラック・ベア』を抜いた。



「盗み聞きは美学じゃない」




機動部隊『白夜』の事務所だ。


セキュリティーは勿論の事、防音関係も最高峰のはずだ。


遠慮なくぶっ放すわ!!



私は立て続けに引き金を引いた。


ランファンさんとレイファは涼しい顔で、ウェイは両手で耳を塞いでいた。



「あら、上手ね」


「ランファンさん。……言いたい事はそれだけですか?」



私は、一発も外さず、3台の防犯カメラとパソコンのハードデスク部分を撃ち抜いた。




「……損害賠償の請求先をどこにしたら良いかしら?」


「どうぞ、私に請求して下さい」



私は嫌味たっぷりに言った。



「私が撃ち落とした機械のデータは、サーバー、codeオメルタですか?」



ソーシャルネットサービス、codeオメルタのサーバーは、そんじょそこらの警察組織のサーバーの何百倍も難攻不落に出来ている。



多分そうだろうから、聞く必要もないが、そうと言われれば今取られた言質(話の内容)が隠ぺいしようがないと諦めが付くから。



「そうよ。お金のかけ方が違うのよ、オトナってね」




まぁ、これ以上、変な記録を取られなくて済む分、何もかも無駄にはなってない。




だから、これで良しとしなきゃ。

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