愛しい魂の一欠片へ、

わたしは最初から可愛く生まれたら良かった。そうでなければ声など持たずに生まれたら良かった。


わたしは最初から自我を持たなければ良かった。一つの目的に向けて真っ直ぐ進むだけのマシーンになれたら良かった。


わたしは最初から知らなければ良かった。知ったうえで抑え込む力を持っていれば良かった。


わたしは最初から傲慢であれば良かった。何も引きずることなく、ただ前に進めれば良かった。


わたしは最初から穏やかであれば良かった。何事にも動じず慈母のようにあれたら良かった。


そうであれば良かった。そうであれば良かった。その在り方が良くなかった。そうあったから良くなかった。


ぽつら、ぽつら、とわたしが私のために出来なかったこと、わたしがわたしであるが故にある悲しみが零れ落ちていく。

わたしの内臓が汚れ切っているばっかりに、必死に取り繕っていた純粋で穏やかな私が崩れ去っていく。


切り分けた魂がわたしを苦しめている? そうじゃない。そうではなかった。

わたしが醜いばっかりに、わたしは私を傷付けてしまったんだ。

醜い内臓なんて見せびらかすものじゃない。隠し通すのが美しいんだって、とっくの昔に理解していたはずなのに。

もう内臓は溢れ出して、私を汚している。狂わせている。救い難い。ごめんなさい、ごめんなさい。

わたしのせいだから。

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