第4話 次の作物
「よーし! 今日も農作業に励むぞー!」
「おー!」
ダンジョン内にてモンスターたちが農作業を開始している。農地の手入れをしっかりと行って収穫量と小麦の品質もどんどん上がっていっている。
みんなキラキラとして良い表情をするようになった。ダンジョンのモンスターの中で農作業に不満を言うものは誰もいなかった。
配給の時に俺から支給されるパン。それを支えにしてモンスターたちはがんばっている。
そんなモンスターたちががんばっている傍で俺は自室にて考えごとをしていた。
「さてと。これからどうするかだ」
とりあえず農作業で食料品の生産はできるようになった。これでモンスターたちも食料欲しさに近隣の村を襲撃することはなくなるだろう。
しかし、いずれパンだけの生活にも飽きが来てしまうかもしれない。
その時に備えて別の食料品を生産するのもありか?
【現在のDPは1000です】
モンスターたちが生活をしているお陰でDPもそれなりに溜まってきた。
でも、初期DP5000に比べたらまだまだ全然大赤字である。
このDPでできることと言えば……
「やっぱり農地開拓だよな」
しかし、今のところ人員もちょうどいい感じである。ここから更に農地を増やすとなるとモンスターたちの労働時間が増えてしまう。
となるとやはり人材を増やす必要があるか。
モンスターは基本的にそのダンジョンの性質に合わせて自動的に沸いてくれる。どうやって沸くのか、その秘密は俺にはわからないが、ゲームというものはそうなのである。
しかし、そのダンジョンには沸き数の上限というものが存在する。
その上限を上げる方法と言えば……
【モンスターの上限数を上げるには1500DPが必要です】
やはりDPでしか解決できない。しかも結構高い。
農地を増やしても人手た足りなければ意味がない。人手を増やすにはまだまだDPが足りていない。
ということは、やっぱりここでみんなで生活をしてDPを増やす他ないか。
「よーし、俺も農作業を手伝おうかな!」
こうしてDPが溜まるまで俺はパンをクラフトしつつ、農作業をして効率をあげていく地道なことをするしかなかった。
そんな生活をしばらく続けた後、2回目の収穫がやってきた。
「やったー! 収穫だー!」
「小麦の在庫が増えるぞー!」
モンスターたちが歓喜をしている。やはり、収穫というのは今までの苦労が実を結ぶ一大イベントなのである。
みんな浮足立つのは仕方のないことだ。現実世界にも収穫祭なんてものもあるしな。
「収穫だー! 収穫だー! 小麦を刈り取れー!」
「収穫した小麦はイビルハム様のところに届けるぞー!」
「えっほ! えっほ!」
モンスターたちが張り切っている。収穫の日には特別にパンを好きなだけ食べていいことになっている。
俺はモンスターたちから届けられる小麦を次々とパンにクラフトしていく。
「ふう……こんなに収穫量が多いとは思わなかった。クラフトするのも一苦労だな」
DPはモンスターが生活をすることで溜まっていくものである。その生活の中には飲食も含まれるわけで、モンスターが腹を空かせて何かを食べればDPが増える。
逆にモンスターになにも与えないとDPの上昇の効率が下がってしまうのである。だから食料の分配は大事である。
「よし、みんな。パンがいきわたったな。それじゃあ食べるぞ。いただきます!」
「いただきまーす!」
モンスターたちがパンを食べ始める。
「うまうま。このパンがうめえんだよ」
「パンを食べて口の中が乾いたら水を飲む。このコンボ最強だな!」
とてもうまそうに食うな。こいつらは。
しかし、パンに合わせる飲み物として泉の水をそのまま飲むのはなんとも味気ないな。
モンスターたちは水で満足してくれているけれど、現代日本に住んでいた身としては、ワインとまでは言わないけどせめてジュースは欲しいな。
次は果実を作ってジュースをクラフトできるようにしようか。
うん。計画がどんどん立っていくぞ。次は農地を作って果樹の育成をしよう。
◇
収穫祭が終わりDPもそれなりに溜まった。やはり食べ物をいつもより多く食べたことが響いている。
【現在のDPは3400です】
「まあまあ、DPが回復してきたな。これならモンスターの上限数を増やしつつ果樹を育てられる」
なんの果樹を育てようか。ブルーベリーあたりがいいかな? これは果樹の中でも成長速度が速い。
今はとにかく、すぐにリターンが欲しい。長期目的の投資をしている余裕なんてないからな。
というわけで、モンスターの上限を増やしてブルーベリー農場を作った。成長速度の速さは正義だ。
「よし、みんな集合! 今日から新しい農場が増えた。その名もブルーベリー農場。小麦と違ってこちらは果樹で成長が遅い。けれど、しっかりと育てた分の見返りはあるからこっちの世話もよろしくな」
モンスターたちはお互いの目を見合わせてパチパチとまばたきをしている。
「小麦以外の作物だって」
「ブルーベリー。聞いたことあるか?」
「ないな。うまいのか?」
「でも、イビルハム様が言うなら間違いないだろう」
「ああ。成長が小麦に比べると遅いらしいけれど、イビルハム様を信じてがんばるぞ!」
どうやらモンスターの中での俺の信頼値はかなり高いものになっているらしい。
それだけパンのうまさが効いたということだろう。
だから未知の作物に対しても俺を信じて育ててくれるらしい。それは本当に助かる。
それからしばらく経過して……
「お、ブルーベリーの芽が出たぞ!」
「本当だ! これを大切に育てるぞ」
ブルーベリー農場に芽が出始めた。このまま大きくなってくれればいずれ樹となり身を付けてくれるだろう。
またしばらく時が流れて……
「結構、大きくなってきたな」
「これ食えるのか?」
「イビルハム様が言うにはまだらしい」
ブルーベリーの樹も苗くらいには大きくなってきた。このまま育てていけば、いずれ結実してうまいブルーベリーが食えるようになるだろう。
そうこうしている間に3回目の小麦の収穫時期がやってきた。
「小麦ができたぞー!」
「収穫だー! イビルハム様のところに小麦を持っていけー!」
「ブルーベリーは食えるのか?」
「まだ食えないらしいぞ」
「そっかー。まあ、成長が遅いって言ってたもんな」
モンスターたちがそんな会話をしながら収穫している。とりあえず、ブルーベリーが実るまではパンだけの生活でガマンしてもらうことにはなる。
「いただきまーす! パンうまうま」
「パンうめえ!」
モンスターたちはパンを食べて満足気に腹をいっぱいにした。
そして、モンスターたちはがんばろうという活力が沸いてきたのか、次の日の農作業も真剣に取り組んでいた。
「小麦を収穫まだかなー」
「おじいちゃん。昨日収穫したばかりでしょ」
「そうだったかのう……」
「小麦よりもブルーベリーを先にどうにかしたいかな」
「そうだね。次の小麦の収穫までに実がなるといいな」
ブルーベリーの果樹も確実に大きくなっている。でも、実を付けるのはまだまだ先の話である。
そうこうしている内にまた小麦の収穫時期がやってきた。
「小麦の収穫だー! わっしょいわっしょい!」
「またパンが食べらるぞー!」
「んで、ブルーベリーは?」
「まだらしい」
「長くね? 小麦2回も収穫できてんじゃん。成長遅いにしたって限度ってもんがあるだろ」
「こんなことならブルーベリーじゃなくて、このスペースで小麦育てれば良かったじゃないか」
モンスターたちがブルーベリー農場に対して不満を持ち始めたな。たしかに短期的に見れば利益はないかもしれない。
でも、中期的に見たら確実にプラスになってくれるはずなんだ。その時が来るまで待ってほしい。
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