第5話 幼馴染への恋
俺は中学校一年生の十月以降、猛勉強をした。
今までは時間が空けば、アニメを観たり、ゲームをしていたりしていたのだが、その時間を泣く泣く減らしていった。
目標が高かったこともあり、時間はかかった。
それでも中学校二年生の一学期末には、弥居子ちゃんが一位だったのに対して、二位にまで上がることができた。
弥居子ちゃんは、
「すごいね、陸時ちゃん」
とわがことのように喜んでくれた。
しかし、俺の最終目標は、学年一位になることだった。
さらに努力を続けていた結果、中学校二年生の二学期末には、ついに一位になった。
弥居子ちゃんは僅差の二位。
「陸時ちゃん、おめでとう」
この時も弥居子ちゃんはわがことのように喜んでくれた。
これ以降、俺と弥居子ちゃんは学年一位を争うようになる。
この頃になると、弥居子ちゃんと俺がつり合っていないという声はかなり減ってはきた。
しかし、その声は全くなくなったわけではなく、
「桜里は、頭はいいかもしれないが、顔は俺の方が上だ! その意味では冬板さんと桜里はつり合っていない。だからイケメンの俺が付き合うべきなんだ!」
という声があり、実際、このような言葉で弥居子ちゃんに告白してきた男子がいたそうだ。
弥居子ちゃんは断ってくれた。
しかし、顔に自信が持てない俺にとっては、その意味においては弥居子ちゃんとつり合いがとれていないと思わざるをえず、悩みの種になってしまっていた。
高校一年生の入学時点では、弥居子ちゃんのことは幼馴染以上の存在だとは思っていないままだった。
弥居子ちゃんもそうだったと思う。
普通の幼馴染だとさすがにお互い距離を取り始める頃だろう。
しかし、俺たち二人は高校に入ってからも、登校は必ず一緒、下校も一緒のことが多く、平日の放課後や休日は一緒に過ごす日々が続いていた。
中学生の時と同じで、こうして親しくしていると、
「つり合いが取れていない」
という悪口を言う人たちが出てくる。
俺は、弥居子ちゃんとつり合いを取れるような男子になる為、一生懸命努力を続けていた。
勉強だけでなく身だしなみにも力を入れるようになっていた。
成績の面では中学校の時と同じで弥居子ちゃんと一位の座を争うようになった。
この面では、
「つり合っていない」
という言葉は言われなくなった。
顔については、弥居子ちゃんが、
「いい顔をしているよ」
と言ってくれていたので、あまり気にしないようにしていた。
こうして、幼馴染としての関係が高校でも安定してくる。
俺はこの関係が高校生の間、ずっと続くと思っていた。
しかし……。
弥居子ちゃんは高校生になると、美人としてさらなる成長をし始めていた。
その成長によって、俺の心の中にだんだん変化が生じてくる。
俺は弥居子ちゃんが好きだ!
俺は高校一年生の九月のある日、その想いが急速に湧き上がり、心を埋め尽くしていった。
そう。
俺は弥居子ちゃんに恋をしたのだ。
それからの俺は、この想いを弥居子ちゃんに伝えようとする。
しかし、それがなかなか言葉にならない。
弥居子ちゃんと一緒にいても、心がだんだん苦しくなってしまう。
弥居子ちゃんは俺の様子がそれまでと違うことは認識していて、心配はしてくれる。
でもそれが俺の弥居子ちゃんに対しての「恋する心」というところまでは理解していないようだった。
その間にも弥居子ちゃんは告白され続ける。
これほど魅力のある女性だ。
たくさんの男子に告白されるのは理解できるというもの。
それも一度失敗してもめげることなく、何度でも告白してくる男子がいたほどだ。
このままだと、いつかは弥居子ちゃんが誰かの告白を受け入れる日がきてしまう……。
だんだんあせってきた俺だった。
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