第17話
驚いた事に中庭には2階の中央廊下から直接下りられるスロープがある。
私は誰とも顔を合わさずに中庭にでる事が出来た。
ドアを開ければ潮の匂いと波の音。時々気紛れに吹く強い風。
久し振りの外の空気を満喫する。
髪が潮風でべた付きそうだけど散歩する短時間なら然程気にはならない。
広い中庭の芝生の上をゆっくりと歩く。時々海を眺めて伸びをした。贅沢な時間。
体中の細胞が喜んで羽を伸ばしてる感じ。
振り向いて見上げれば、そこには大きな洋館が建っていて沢山の窓にはレースのカーテンが揺れていた。
然り気無い視線は中庭にいる間中向けられていた様に感じたが、使用人のものだろうと特に気にならなかった。
突然の来客でしかもそれがこんな小娘なら興味半分で見られても仕方ないと思う。
どうみても私と黒木さんは釣り合わないんだから。
軽くため息をつき来た道をゆっくりと戻った。
綺麗に手入れされた芝生には犬が踏み荒らした痕跡など見られない。
「ふふっ、余程ちゃんと仕付けられているのか隅っこを歩いてるのか。」
犬好きな私はドーベルマンの気配を感じたくて振り返り何度も庭を見回した。スロープを上がりきり扉を開けて中に入る。
扉を閉めるとカチャリと音がして自動でロックされたんだと分かった。
「さすがセキュリティがちゃんとしてる。」
この上番犬まで放すなんてお金持ちの危機管理は凄いもんだ。
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