第33話:「冒険者たちの未来」

 黒竜の巨体が崩れ落ち、冒険者たちは勝利の歓声を上げた。漆黒の災厄を討ち果たし、街を救った彼らの姿に、ベルガルドの人々は安堵と喜びを感じていた。


「やったぞ……黒竜を倒した……!」


 レイヴンが疲れ切った表情で剣を地面に突き立て、ミリアは疲れながらも微笑みを浮かべた。Aランク冒険者のエルネストとセリーヌも無事に役目を果たし、全員が戦いを終えた達成感を共有していた。


 ガルドは、少し離れた場所で静かにその光景を見守っていた。彼は今回もCランク冒険者として後方支援に徹しながら、最後の攻撃に参加したものの、全体の勝利は仲間たちの力があってこそのものだった。


 街には再び平和が戻り、冒険者たちはそれぞれの役割を果たし、次なる日常へと歩み出していく――。



 その一方で、かつての冒険者グリードは黒竜討伐の報を聞き、苛立ちと絶望を感じていた。彼はゼノスと共に黒竜を利用し、ベルガルドを支配しようと画策していたが、黒竜もゼノスも何の役にも立たなかった。


「黒竜も……ゼノスも……何の役にも立たない……!」


 グリードは森の奥深くで、怒りに震えながら地面を叩いた。その狂気じみた声は、森の中に響き渡っていた。


「こんなはずじゃなかった……俺はもっと強くなるはずだった……!」


 その時、グリードの背後に、漆黒の影が静かに現れた。その存在は、これまでに見たことのないほどの冷たい気配を放ち、グリードの体を包み込むように立ち上がった。


「誰だ……!?」


 グリードはその気配に驚いて振り向いたが、そこには冷たく笑う魔族の姿があった。


「我が名はオパルデス……お前の苦しみと絶望、そしてその肉体を……我が物にする」


 その瞬間、オパルデスはグリードに向かって手を伸ばし、彼の体を黒い霧で包み込んだ。グリードは抵抗しようとしたが、体が動かず、次第に意識が薄れていく。


「やめろ……俺は……俺はまだ……!」


 グリードの叫びは、オパルデスの冷酷な笑いにかき消され、やがて彼の体は完全に支配されていった。グリードの目は虚ろになり、その体をオパルデスが操るものとなった。


「これでいい……お前の肉体は使える……」


 オパルデスはグリードの体を完全に乗っ取り、その力を利用してさらなる悪意を持ってベルガルドを狙おうとしていた。



 黒竜との戦いが終わり、街は一時の平穏を取り戻したが、背後には新たな脅威が迫っていた。ゼノスは姿を消し、グリードはすでに存在しない。その肉体を手に入れたオパルデスが次なる災厄をもたらそうとしていた。


 ガルドたち冒険者は、まだ知らぬ脅威に向き合うことになるが、その日はまだ遠い。街には再び日常が訪れ、冒険者たちはそれぞれの日常に戻っていく。だが、背後で暗躍する新たな敵の影が、再び彼らの前に立ちはだかるのは時間の問題だった。


 ベルガルドの平穏は一時的なものに過ぎなかった。そして、新たな冒険の幕が開ける――。

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