第15話 想定外

長い長い授業を終え、放課後になった。


いつもなら、木滝さんが待っている音楽室へと行く━━━━━のだが......


「今日からよろしくお願いします! 真波さん、八葉矢さん!」


そう言いながら、机の上に教材をバラバラと置いていく木滝さん。


今、俺たちがいる場所は自習室だ。


昼休みに話し合った結果、今日からテスト勉強をすることになり、こうして4人で机をくっつけて勉強をするつもりだ。


......特に木滝さんに教えるのだが。


まずは英語。英語でやるべき事と言ったら? そう、単語だ。俺たちの学校では、単語は中間テストでも多めに出題される傾向がある。


「単語帳開いて、えーっと......347ページから386ページだね」


「......」


単語帳を開くと同時に無言になる木滝さん。だが、やらないといけないものはあるのだ。


俺は、木滝さんに単語を見せて意味を選択させることにした。実際のテストで出るような形式だ。


一方、なんか別グループ的な龍希と間宮さんはと言うと━━━━━


「ここ間違ってる。9×7の凡ミス。あと、そもそも公式違くね?」


「え?うそ」


......間宮さんもかよ......





開始してから1時間半の時間が経過していた。


龍希と間宮さんは、途中で飲み物を買いに行ってから戻ってきていない。


木滝さんは、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしながら英単語帳の最後辺りを見ている。ただ、嫌そうにはしているものの、意外と覚えることができており、確認してもだいぶ正解できている。


「木滝さん、もしかしてだけどさ━━━━━」


もしそうだったら木滝さんに教える意味......というか、自学自習で何とかなってしまうのだが......


「━━━━━テスト前勉強してない?」


木滝さんはその問いに目を丸くして答えた。


「え? めんどくさいからしてないけど......?」


うん、だろうな。でも、こんなに覚えがいいのに赤点常連ってどういうこと?


「赤点常連」そう聞いて、これは本当にマズイ。そう思っていたが、予想以上に赤点脱出は出来てしまうのかもしれない......。





「せんぱーーーーーーい!!!!! 可愛い後輩が来ましたよーーーーー!!!!!」


私は思いっきり音楽室のドアを開ける。


いつもなら、そこには海斗先輩や八葉矢先輩、知らない先輩に木滝先輩がいるはず......でも、いなかった。


「......」


ヤバい、恥ずかしい。


そう思い、私が部屋を後にしようとした時━━━━━


「夏季か?」


知っている声に振り向くとそこには━━━━━八葉矢先輩と......知らない先輩がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る