第10話
先輩は私の背中をさすった。
「突き飛ばして悪い、痛えだろ?」
先輩は気を使ってそう言ってくれる。
私は
「いえ、助けていただいたのにそんな…!」
とブンブンと首を振りながら返した。
先輩は私の背中に両腕をまわし、腰を抜かして力が入らない身体を抱き抱えるようにして起こしてくれたので、私の顔は真っ赤になった。
トラックの運転手がドアを開けて慌てて出てきた。
若い男の人だった。ガードレールに突っ込んだのは左側の補助席付近だったおかげで運転手に大きな怪我はなかった。運転手はかなり動揺した様子で何度も私と先輩に謝っていた。
程なくして警察が来た。事故の目撃者として私と先輩は長いこと話を聞かれ、解放されたのは20時を過ぎていた。
「先輩、本当にありがとうございました。」
ようやく解放された後、私はそう言って先輩に深々と頭を下げた。
「別にいい。つうか本当に危なかったな」
先輩の濡れた前髪の隙間から見えるその目は悲しげで切なくてつい目が離せなくなる。
「はい、先輩がいなかったらと思うとゾッとします…。お時間とってしまいすみません。今度何かお礼をさせてください!」
私のその言葉に
「礼とか別にいらねえよ。お前家どの辺だ?送ってやる」
先輩は本当に見返りなど求めていない様子で私にそう聞いた。
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