第9話
身体が宙に浮いたような気がした。
地面から足が離れたのは確実だった。
私は死んだの?
目を開けなくても分かる。
死んでいない。
誰かが私を安全な場所に突き飛ばして間一髪で助かったのだと分かる。
私が目を開けると、倒れている私に覆いかぶさっているのは私と同じ制服を着ている男の人だった。
その男の人は、紛れもなく修二先輩だった。
「痛ってえ…。おい、お前大丈夫か?」
先輩は顔をしかめながら、私を見てそう言う。
夢だろうか?
「おい」
いや、現実だ。先輩が目の前にいて、先輩が私を助けてくれた。
放心状態で返事をしない私に先輩はもう一度私に話しかけ、私はハッとして
「あ、だ、大丈夫です!」
と返事をして急いで身体を起こすと強く打ち付けたらしい背中がズキンと痛んだ。
トラックは私の2メートルほど前のガードレールに突っ込んだまま停車していた。
ねじ曲がったガードレールと割れた窓ガラスの破片が飛び散ったその場を見てこれが夢でないことを思い知らされた。
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