第8話
雨がポツリポツリと降っていたのはほんの一瞬だけで、たちまちザーザー降りの大雨に変わった。
突然の夕立に道行く人は慌てて近くのお店や屋根のある場所に逃げ込んだ。
キラキラと輝く商店街が一気に慌ただしくなる。
道を歩いていた皆が、困ったように、もしくは鬱陶しいというような目つきで空を睨んでいた。
ついてないな。
そう思いながら近くのコンビニに寄って傘を買おうと足早に歩いた。
雨が私の長い髪を濡らし、前髪はおでこに張り付き、制服が重く湿っていき私の憂鬱を加速させた。
ふと、後ろから大型車特有のエンジン音が耳に入り何気なく後ろを振り返った私はハッとした。
その大型トラックは勢いよく走ってきて、歩道を歩いている私の方に迫ってきた。
ブレーキが効かないのだろうか。
トラックは止まることを知らずに私めがけて向かってくる。
嘘でしょ…?
クラクションが地響きのように鳴った。耳をつんざくような周りの大きな悲鳴が私の心臓を震わせた。
轢かれる…!!
身動き1つとれないまま立ち尽くした私はギュッと目を閉じ目の前の光景を遮断した。
"ああ、こんなに簡単に人は死ぬのか。"
こんな時すらも、私はただの傍観者の様な想いを抱いた。
トラックにはねられ、体中の骨がボキボキと音を鳴らしひび割れていく所を想像した。
身体が空を仰ぎ冷たいコンクリートに打ち付けられ無防備になった全身を雨が悲しく濡らすところを想像した。
私は死ぬんだ。
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