第3話 1人思いふける

「りつかさん!はーい!!僕の方こそありがとうね〜」

「じゃあ、りつかもゆっくりとおやすみなさい〜!」


「はーい!ありがとう〜」


ジャリ….

ジャリ…..

ジャリ…..ジャリ…..


体験したことのない時間。

嫌な感じはしなかった。

言葉では難しいけど・・・不思議な感じ。


ジャリ…..

ジャリ…..ジャリ…..


と、不意にりつかに聞かれた事が思いかえった。


[「・・・・ん…わからない・・・ですね」]


多くの同年代でも、答えられない人はいるのかもしれない。

けど、実際に自分もそうだって客観的に見るとショックを感じる。


ジャリ…..


ジャリ…..


ジャリ…..


わかりやすく足取りが重くなった。


まぁ僕に関しては今に始まったことじゃないんだけど・・・

友達とも違う人から、改めて感じるとまた違った。


「・・・りつか」


意味もわからなく小声で出た名前。


「不思議な子だったな」


スッと体を捻り振り向くとまだりつかは湖の畔に立っていた。


そして、またゆっくりと指揮者のように腕を振る。

それに合わさるかのようにして、タイミングよく水面が小さく波打っていた。


「・・・りつか、か」

小さく口に出し、夢じゃないことを確かめるよう自分の腕を強く握った。


ぎゅ・・・


握った腕には掴んだ感触が確かにあった。


そんな不思議な光景を後ろに、別荘まで歩み戻った。


・・・

・・


ガチャ….


家に戻るともちろん電気などは付いていない。

おそらく両親はまだ寝ている。


物音を出さないよう静かに動く。

向かう先は、自室ではなくキッチン。


本来酔い覚ましで散歩だったこともあり、喉がカラカラだ。


ガパッ…


冷蔵庫は、明日分の食材もかなり詰まってた。

「明日も母さんたくさん作るんだな・・・」


..パタン


適当に150mlサイズのお茶を取り、物音を立てないように自室に戻った。


ベットにつくなり手にしたお茶を飲み干した。

もう、酔いはなくなってる。


「・・・そうね」


そう言いながら横になる。


「・・・今後の人生かぁ」

また言葉だけ浮かんでは消え、浮かんでは消え、その度になにも想像できない。


今日親に言われた言葉、周りの友達の就職状況、学校の先生たちの期待。

色々思い浮かんだ。

けど、どれにも自分がいないのがわかる。


「・・・・ふぅ」


なにもない天井を見つめた。

それでもなにも変わらない。


ゆっくりと瞼を閉じた。

窓から吹く夜風が心地よい。


と、一瞬りつかの顔が思い浮かぶ。

それは、楽しそうにしていた時の顔と、その後の寂しそうな顔・・・


その時の顔は、自分のこれまでと同じようなものなのかなって思いふけ、気づけば眠ってしまった。


・・・

・・


次の日、なかなか起きてこない僕を自室まで起こしにきた母に呼ばれ目覚めた。


------------


最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?


不定期になりますが、順次更新していきますので、作品をフォローしてお待ちいただけますと幸いです。


引き続きよろしくお願いします。

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Letter Bitter. 〜アナタへ最後の手紙〜 初めての書き出し小説風 @mako1990_02

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