14 全てが終わった日×決心を与えられた日×大事はモノが出来た日

 こうして、追放されてから夜を迎えた――。


 昨夜は生産ギルドマスターのドグラスさんに、工房で寝泊まりしても良いぞ言われたが、流石に石畳の上で寝るわけにはいかず、レティの反対もあって宿を取る事にした。


 やっぱりそれぞれのギルドで成り立っている街だけあって、宿代は安価だった。

 高級そうな宿も見つけたが、駆け出しらしいのが集まる宿にした。


 俺は『鍛治入門書』を手放す事なくしっかり宿に持ち込んだ。

 とりあえず、金属の選定についてひたすら考えてみる事にした。


 レティは美少女の姿に変えられて、もう眠りについてる。

 たまに寝言聞こえるし、いびきも聞こえる。

 またこれが可愛いから憎めない。

 ただ、『念話』でされるから、集中したい時には厄介だ。


 鍛治工程の金属の選定部分を繰り返し読む。

 そこで気になった記述があった。

 

・ 二種類かつそれ以上の金属を配合または錬金して強度を上げる


・ 金属には粘度・硬度という概念がある


・ 特徴ある金属を複数合わせて鍛錬を行うと、より強固で粘り強い武具が出来る


<まったく……、彼奴と同じ運命を……辿るなんて……まるで、……かしら>


「えっ? レティ? 何か言った?…………寝言かな?」


『鍛治入門書』には鍛冶師が使う道具について記述されていた。図式で詳細が描かれている。

 鎚での打ち方や、炉にくべる時のタイミングや、金属の不純物を取り除く場合の注意事項などだ。


 それに、どんな性質を持った金属なのか。で、全てが変わってくるって事も理解した。

 ただ、やっぱりこれはそれなりの経験が必要なんだと思う。一朝一夕じゃあ分りっこない。


 じゃあ、今の俺にもっとも有効なのは『鑑定』を使って、金属の性質を知る。って事だ思う。


 そこに何かヒントとなる事がある筈なんだ――。


「あの工房に金属っぽいのたくさんあったし……ひと通り全部『鑑定』を使ってみるのも良いかもしれない」


 俺が加入試験に受かったとして、それでもやっぱり見習い鍛治師から始まると思う。


 見習いの上、下級鍛治師、さらに上級鍛治師になるのってどうすれば良いんだ?

 それに、鍛治師としてやってくんなら、名を広めたい。

 でも、アルフォンス家の問題もあるから、容易にアルフォンスの名は出したくない。


 ……なら、どうすれば良いんだ?


「あぁ、なんか色々考えてると、頭の中ぐちゃぐちゃになるな!」


「いやいや、この本に下級から上級鍛治師についての記載があったはずだ――。条件みたいな……」


・下級鍛治師

 下級ランク取得条件

 金属物質に加えてさらにひとつの物質を組み合わせて作製

 (加える物質は金属以外も含む)


・中級鍛治師

 中級ランク取得条件

 金属物質に加えて、さらに2つの物質を組み合わせて作製

 (加える物質は金属以外も含む)


 上級はさらに、金属の物質に3つの物質を加えて作製することと、記されていた。


 そうか。

 粘りが強い金属を2つに、それから強固性に優れた物質と、柔軟性に優れた物質などを組み合わせれば、良い武器が出来るじゃないか?


 問題はマスター級取得条件だ――。


 『作製した武具に得能効果をもたらす』

 って書かれているけだ、恐らく簡単に言うと、武具そのものに『スキル』や『特殊な効果』を持たせる事って意味なんだと思う。


 でも、その方法が分からないな……。


 むしろ、それが簡単に分かってしまうと、マスター級ではないのか。と納得した。


 要は、組み合わせる物質が多ければ多いほど良い武具になるし、それが出来るかどうかでランクも上がるって訳だ。


 そんな事を考えていると、俺はある事を思い付いた。


「……逆の発想で、武具に『鑑定』を使って製作レシピ的なのが確認出来たりしないかな?……って、そんな都合の良い話なんて……無いよね?」


 俺はこうして、色んな事を考えながら、眠りについた。


 これから鍛治師として歩むっていう決心と、自称レティってなんなのか? とか、アルフォンス家の事も――。


 ただ俺は、ひとりじゃないって、レティの寝顔を見るたびに隣りに居てくれる存在の有り難みを感じながら――。


 どんな時もコイツは可憐で可愛いんだ。


 皮肉たっぷりで生意気なヤツだけど、きっと俺は……、


 レティとならこの先もやって行ける。


 そう思いながら、明日を迎える事にした――。


 長くて長くて、色々あった1日を乗り越えられた。



第一章 『怒涛の追放から1日目』 完

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貴族家を追放された俺がゴミスキルと馬鹿にされた『鑑定』と見下された下級職『鍛治師』で最強になるまで。 ピコ丸太郎 @kudoken

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