第5話

しばらくすると、もう1人、女の子がやってきた。




「おはよー!嫌だー私3人目?きゃはは!

 うける!席どこどこ?あ、あったぁ!」




一華の前の前の席にやってきた。



一華はその女の子のテンションに驚き、きょとんとして見ていると目が合ってしまった。





「はじめまして!わたしは奥野理恵おくのりえです!あなたは何ちゃん?」


「私、小山一華。」


「いちかちゃーん!かわいい名前だね。いっちゃんって呼んでいい?

近くの席だし、どうぞよろしくね。」


「理恵ちゃん。よろしく。」


「理恵でいいよぅ!いっちゃんはどこ中?」


「多分市外から来てるから名前聞いても知らないと思う。」


「そうなの?奇遇!私もこの区から一番遠い区から来てて同じ中学の子いないんだ。

 やだ!ますます仲良くなれそうじゃん!」




理恵はハイテンションで話すため、一華は多少押されがちだったが、はじめてできた友達にこころ踊る。





「つーか、君、テンション高。」




横で聞いていた和央が、呆れたように笑って言う。





「なによぅ。そこのチャラっぽい君は、何君?」


「俺、佐原和央。よろしく。」


「佐原っちね!よろしく!」




そんな会話をしていたら、続々とクラスメイトが入ってきた。8時30分になると、放送が入り、在校生の案内係が来て、入学式の案内がなされた。



みんな誘導の先輩が言うままに列を作り、わけもわからないまま体育館へ向かう。



体育館に入ると、後から2人で来ていた、一華のママと、梓のママが並んで座っていたのが見えて、一華は気がついて頭を下げた。



校長とか偉い人の祝辞を賜り、校歌を合唱部が歌う。




そしてまた、なにがなんだかわからないまま教室に戻された。




さっき入学式で紹介された担任の小野おの先生がやってきたが、なんだか、やる気が無さそうな中年のおじさんだった。



適当によろしくと挨拶をし、プリントを配布しては読んでおくように、と促すだけだった。



その日は、ショートホームルームがあるだけで帰宅となった。


一華が帰る準備をしていると、和央が目の前に現れた。



「こっこ、連絡先、交換しない?」


「あ、うん!しよう。フルフル?コード?」


「じゃあ俺コード出すよ。」



和央とSNSアプリの連絡先を交換し、

和央はまたね、と言って帰っていった。




それを見ていた理恵が話しかけてきた。




「私とも交換しよう!いっちゃん!」




「ねーね!私もいい?」





理恵と前の席の女の子が集まり、それぞれと連絡先を交換した。


そして、それを見ていたもう2人も話しかけてきて、お互い自己紹介する。



「ねぇねぇ、明日からのお弁当。この5人で食べない?」


「いいね。そうしよう!」


「よろしくね。私、綱田亜美つなだあみ。」


「私、柏木かしわぎるか。」


「私、森山敦子もりやまあつこ!」



亜美ちゃんは清楚なオシャレ眼鏡女子。



るかちゃんはすこし気怠い感じの今時の女の子。一華の前の席に座っている。



敦子は元気でテンションが高めの女の子だった。




連絡先の交換を忙しそうにしてる姿を、

梓が廊下から優しく見守る。




とりあえず入学式1日目。

新しい一歩を踏み出した一華。

先行きは好調に見えた。

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