第5話

旦那様は頭を抱えた


ここは家名を護る為に自分達の初めての息子を犠牲にするか、

それとも表には一切出さず、その代わり精一杯自分達の息子を可愛がるか


そんな旦那様の苦悩を察した妻は口を開いた




「………あなたはどうしたいですか?


この小さな命と私達の名前と、どちらに重きを置きますか…?」


「…っ!!」




静かな、妻からの問い


それに旦那様は言葉を詰まらせる




「……私はどちらも護りたい…


………だが、それはどうも無理な様だな……


ならば、私は……………


………済まない、家名を選ぶ」


「…そう、ですか……」




旦那様の決断を聞き、妻は悲しそうに腕の中の我が子を見る


その瞳には涙が浮かんでいた




「……しょうがない、ですよね…


忌み子なんて生きていても仕方ないですし、虐められたりしてこの子が苦しむ様なんて見たくないですものね…」


「済まない…」


「謝らないで下さい…


あなたは悪くないわ


……ごめんなさい、私がこんな色に産んでしまったから…


…………あなた、ちょっとだけこの子と二人にしてもらえないかしら?」


「ぁ、あぁ…」




旦那様は妻の方へ再度振り返って、妻と忌み子の我が子を置いて部屋を出た


因みに、メイドや執事達は旦那様達の会話の途中に静かに退室していた


旦那様が出て行ってから部屋の中の妻は、忌み子である我が子の額にチュッとキスを1つ落とした




「…母親失格ね


私にはあなたを護れないわ…


こんな不甲斐無い母親でごめんなさいね……


どうか、強く生きて


私達の最愛の息子……………」




布に包まれた忌み子は淡い光を放ってこの部屋から消えた


妻が強制転移魔法を忌み子に使ったのだ


そして妻は泣き崩れた


この家から泣き声が途絶える事はなかった

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