第31話
「蘭がちゃんと隣にいるのにしないよ」
私の考えていることが分かったのか、クスクスと笑いながら口の端スレスレに口付けてきた。
身体の怠さにうんざりしそうになるけど、碧くんがいる手前そんな素振りを見せてしまってはいけないと顔を引きしめる。
「碧くん、包帯……新しくしよう」
碧くんの腕を巻いている包帯が取れかかっているのがさっきから気になっていた。
血は滲んでいないけど、包帯に隠されている肌は痛々しい。
碧くんは痛くないと言うけど、痛いに決まっているのに。
消毒をしてあげる為に救急車の元へと向かおうとすると、身体を抱きしめられてしまった。
ぎゅぅと隙間なく抱きしめられ、肌が密着する。
碧くんの心臓の音がよく聞こえ、彼がちゃんと生きていることに安堵する。
「ねぇ、蘭は俺が大事だよね?」
「う、うん。勿論。碧くんが大事だよ」
「ありがとう。じゃあ、俺の為を思ってくれるならここにずっと居てくれる?」
「…………え?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
固まる私の視界には嬉しそうに微笑む碧くんの顔が映る。
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