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第30話

「ん……ん〜……」


起きたくないのに、頭に触れる手が私を起こそうと撫でる。

まだ寝てたい……。


イヤイヤするように顔を振ると、クスッと笑う声がすぐ近くで聴こえた。

誰かだなんて1人しかいない。


ゆっくりと目を開いて、寝ぼけ眼のまま目の前を見つめると精巧な顔がある。

素肌をさらけ出したままの碧くんが、私のことを引き寄せて額に口付けた。



「蘭」


「……碧くん。」


あれ……?

私いつの間に眠って……?

眠る前のことを思い出そうと、起き上がろうとした瞬間。


「っ?」


ガクンと身体から力が抜けて叶わなかった。感覚のない下半身に訳が分からず頭上にクエッションマークを浮かべる私に、碧くんがゆるりと布団の中で私の腰をさすった。



「今日は起き上がれないと思う」


「え……?」


「昨日、抱き潰したから。蘭が気を失っても抱いたから無理だろうね」


「!?」



サラッと恐ろしい発言に目を見開く。そして昨日のことを思い出した。

そうだった……。昨日、大学に漸く行けたのに深見くんの存在のせいで碧くんがパニックになって、家に戻った。


その後、碧くんを宥める為に……。



そういえば何度か起きたけど、碧くんに身体を揺さぶられてたり、身体の奥を突かれてたりと快感にまた意識を失ったりと繰り返していたような気がする……。


通りで腰から下に力が入らないわけだ。



「っ! 碧くん」


ハッとして碧くんの身体を見る。まさか私が気を失っている間に自傷行為していないよね?


碧くんの腕を掴んでじっとみるけど、新しい傷はないみたいだ。背中は多分、私が必死にしがみついたから引っ掻き傷ほあるだろうけど、それは駄目だけどまぁいいとして。


自傷行為をしていなかった事に安堵した。

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