第28話

▫️



家に帰れたとおもえば、碧くんにソファーに押し倒された。

そして隙間なく強く抱き締められ、重さに息苦しさを感じる。


だけど碧くんを押しのけようとしていけない。


この情緒不安定な状態の碧くんを否定しようものなら、大変なことになるのは目に見えている。

あの時のことは思い出したくないくらいトラウマだ。



碧くんの首筋に残っている傷跡は一生消えないかもしれない。



「碧くん、私は碧くんしか必要ないよ」


「あいつは蘭の事好きだって言った。蘭の事を俺から奪うかもしれない。そんなの許さない。蘭は俺だけのものなのに」


「碧くん……」



碧くんの頭を撫でる。そんなに不安にならなくても私には碧くんだけなのに。

私は……碧くんしか好きになってはいけない。


彼の為にも、私は碧くん以外の人を好きになってはいけない。



「深見くんのことは何とも思っていないよ。私には碧くんがいるから。」


「蘭……」


光が無く淀んだような暗い瞳が私を見下ろす。そっと彼の頬に手を伸ばし、引き寄せて自らキスをした。

碧くんはされるがままになっているのか、私から舌を絡める。


「んっ、ん、」


クチュ、クチュリ、と舌の絡み合う音が響く。自分からしておいて羞恥が湧くけど、少しでも碧くんを宥めることが出来ればと堪える。

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