第27話

これ以上ここに居られない。深見くんが余計なことをしなければ、と思うけど彼の事ばかりを責めるのは間違っているだろう。



「碧くん、大丈夫……。家に帰ろうか」


「蘭、蘭、蘭」


私の名前をずっと連呼する碧くんに悲観しながらも、来た道を戻ろうとする。

早く家に帰って碧くんを安心させてあげないといけない。



「蘭ちゃん、またね」


「…………」



深見くんは碧くんの様子にこれ以上何も言うつもりは無いらしく、笑顔のまま手を振ってきた。

はっきりいって今後一切深見くんとは関わりたくない。


手を振り返すこともせず、私はただならぬ様子の碧くんに必死に宥めながらも自宅に戻ることしか頭になかった。


だから気づかなかった。深見くんが仄暗い瞳で私を見つめていたことも。笑顔を無くし、凍てついた瞳を碧くんに向けた事も。


ーー彼が更に碧くんを追い詰めようとしていたことにも。


高校の時、全く接触してこなかったというのに今更関わりを持とうとする彼の本意を考えることなど、出来なかった。

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