第26話
「っ、蘭」
「いった、」
思いっきり背後から抱き寄せられ、堪らず声を出してしまう。
碧くんが強く抱き締めてきたことに分かった時には深刻な事態になってしまっていた。
私を抱き締める碧くんの身体が震えていて、呼吸も浅い。
まるで過呼吸を起こしているかのような碧くんの様子に、血の気が引く。
「あ、碧くん、」
「蘭、蘭……蘭、やだ……やだ。俺の事捨てないで……俺から離れないで……蘭がいないと……蘭」
「っ、」
……あぁ、こうなってしまったら駄目だ。なんとか振り返り、碧くんのことを強く抱き締め返す。
碧くんは私が離れてしまうんじゃないかといつも不安に思っていたから、深見くんからの告白は碧くんにとって脅威に感じたらしい。
こうなってしまうと碧くんは…………。
ここに刃物など無くて良かったと思うしかない。
「はは……文乃くんってば高校の時より狂ったねぇ。それとも、蘭ちゃんを繋ぎ止めておくための……演技なのかな」
「っ、深見くんっ!!」
「なぁに、蘭ちゃん」
こんなパニック状態になっている碧くんになんて事を言うのか。
流石に咎めるように声を上げると、深見くんは全く悪気もなくにこやかに首を傾げた。
ーー大学にようやく来れたのに……今日は台無しだ。
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