第23話
碧くんは暫く沈黙をして、仕方ないとばかりに小さくため息をついた。
なんとか碧くんは我慢してくれたらしい。
碧くんにベッタリと張り付かれながら、講義を受ける教室に向かっていると。
「! 蘭ちゃんっ」
「っ!??」
突然背後から聞こえた弾んだ声にびっくりして振り返る。
何事かと目を白黒させていると、ニコニコと満面の笑みを浮かべて近付いてくるのは高校の時からの同級生ーー深見縁だった。
くりくりとした大きい瞳で幼い顔立ち、低めの身長と小柄で一目見たら美少女だと思うが、実は男の子だ。
そんな彼とは高校の時、クラスメイトで少し話をしたぐらいで『蘭ちゃん』と呼ばれた事などなく、対して親しくもなかった筈なのに。
何故そんな笑顔で近寄ってくるのか。
不思議に思うが、それよりも碧くんが不機嫌になったことの方が問題だった。
「何、勝手に蘭のこと呼んでるの君」
「あ、文乃くん。僕のこと覚えてる?」
碧くんが冷たい声と冷たい目で見つめたというのに深見くんは表情を崩さずニコニコと微笑んだまま。
……なんというか、深見くんってこんなに図太かったっけ?
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