第17話
碧くんにお願いしたところで、会わせてくれる気は無いだろう。
多分碧くんにお願いしたら……また……自分を痛めつけてしまいそうな気がする。
自分自身を切りつけ血を流しながら私を引き止める碧くんの姿を思い出し、ギュッと目を瞑った。
「蘭、帰ろう」
「うん。碧くん、手を繋ごうか」
自ら碧くんに指を搦め、碧くんの家を出る。あの家から出れたことに安堵する。
相変わらずの碧くんのご両親に気づかなかったけど、凄く緊張してしまっていたらしい。
どっと疲れが出たけど、暫く会わずに済むと思えば何とか気持ちを切り替える。
「…………」
どうして碧くんの両親は碧くんが自傷しているのに気付いてる筈なのに、何とかしようとしないんだろう。心配はすれど碧くんの望がままにさせている。
疑問に思うけど、碧くんに自傷させたくなくて聞かないでいる。
「蘭、ずっと俺のそばに居てくれるよね。」
「……、もちろんだよ。碧くんの傍にずっと、いるよ」
「約束守ってよ?」
肯定しか許さないとばかりに圧をかける碧くんに私は曖昧に笑みを返す。
ーー大学卒業したら、婚姻届を出す、という約束だ。
大学卒業まで後3年。
この3年間が私が"自由"でいられる残された時間だった。
自由といっても、私が望んでいる自由じゃないけど…………。
彼の傍にいなきゃ、いけない。
血だらけで微笑む碧くんの姿をもう見たくないから。
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