第15話

▫️



「遅かったね。碧が駄々を捏ねたかな?」


処置し終え慌てて碧くんを連れて、碧くんの家に向かえば。

出迎えてくれたのは碧くんのお父さんだった。


ニコニコと微笑んでいるけど、何となく圧を感じて息が詰まるような感覚がする。



「中々顔を出せずにごめんなさい……」


「謝ることじゃないさ。碧と蘭が心配だと晴子が騒ぐものだからね。」



お父さんは肩を竦め、リビングへと繋がる扉を開けてくれた。

扉が開いたと同時にソファーに腰掛けていた碧くんのお母さんが駆け寄ってきた。



「碧ったら中々帰ってこないんだもの。蘭ちゃんが居るから心配は無用だろうけど、やっぱり連絡1つ無いのは心配なのよ?」


碧くんのお母さんはそっと碧くんの手を握り締めた。


慌てて頭を下げると、にっこりと微笑まられる。



「母さん、用もなく呼ばないでくれないかな。それも翠なんか使って」


「だって碧に連絡しても中々来てくれないんだもの。翠にお願いしちゃった」



碧くんのお母さんはクスクスと笑いながら、碧くんのお父さんの横に並んだ。

2人して並ぶと本当に美男美女で、とても2人も子供がいるとは思えない程若く見える。



「お前が蘭と2人で住めるのは晴子のお掛けでもあるんだから、そんなつれない事言うんじゃないよ。蘭と一緒になるのを認めてやってるだろう?」



碧くんに笑いながらそう言うけど、碧くんは嫌そうな顔をしている。

2人に見つめられ、目線を逸らしてしまいたくなる。


このまとわりつく様な視線が苦手なんだよね……。



「蘭ちゃん、そろそろ碧と婚姻届は出していいんじゃないかしら? そうすれば、碧も少しは安心出来ると思うのよ」



チラッと碧くんの腕を見て、ふぅと息を吐いた。服で隠れてはいるけど、さっき手を握った時に気付いたんだろう。

まだ碧くんの包帯があれからもある事に。

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