第14話
泣くかもしれない、そう思った時には彼の瞳からポロリと涙が零れ落ちた。
「蘭、嫌なんだ。蘭と俺の2人きりの空間を邪魔されたくない。外に出て欲しくないのに……アイツらは邪魔ばかりする」
「碧くん……大丈夫だよ。私はずっと碧くんと一緒にいるんだもの。少し我慢すればいいだけだよ」
「蘭……」
碧くんの手首にそっと触れて包帯をゆっくりと解く。視界に映った痕に思わず嘔吐きそうになったけど、ぐっと堪えた。
なんでこんなにも……自分の事を痛めつけられるのだろう。
私が碧くんから少し離れただけでも、自分のことを傷付けてしまう。
何度も止めて欲しいとお願いはしているけど、改善するどころか悪化しているように見える。
滲んでいる血をそっと拭き取り、消毒液を掛けたけど碧くんは顔色1つ変えようとしない。
痛い筈なのに……。
「碧くん……痛いでしょう……? ごめんね……」
「痛くてもいいんだ。だってこうすれば蘭は俺の事だけ考えてくれるでしょう? 蘭が俺だけしか考えられなくなるなら平気なんだ。蘭が俺から離れようとしたり、俺以外のこと考えることの方がずっと辛いから」
クスクスと笑いながら暗い瞳が私を見つめる。
常に碧くんのこと考えているけど、現実的には碧くんだけの傍にいて碧くんだけ考えるのは無理なのに。
大分無茶なことを言う碧くんに私は曖昧に笑みを返して、包帯を巻いてあげることしか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます