第14話

泣くかもしれない、そう思った時には彼の瞳からポロリと涙が零れ落ちた。


「蘭、嫌なんだ。蘭と俺の2人きりの空間を邪魔されたくない。外に出て欲しくないのに……アイツらは邪魔ばかりする」


「碧くん……大丈夫だよ。私はずっと碧くんと一緒にいるんだもの。少し我慢すればいいだけだよ」


「蘭……」


碧くんの手首にそっと触れて包帯をゆっくりと解く。視界に映った痕に思わず嘔吐きそうになったけど、ぐっと堪えた。


なんでこんなにも……自分の事を痛めつけられるのだろう。

私が碧くんから少し離れただけでも、自分のことを傷付けてしまう。


何度も止めて欲しいとお願いはしているけど、改善するどころか悪化しているように見える。


滲んでいる血をそっと拭き取り、消毒液を掛けたけど碧くんは顔色1つ変えようとしない。

痛い筈なのに……。



「碧くん……痛いでしょう……? ごめんね……」


「痛くてもいいんだ。だってこうすれば蘭は俺の事だけ考えてくれるでしょう? 蘭が俺だけしか考えられなくなるなら平気なんだ。蘭が俺から離れようとしたり、俺以外のこと考えることの方がずっと辛いから」



クスクスと笑いながら暗い瞳が私を見つめる。

常に碧くんのこと考えているけど、現実的には碧くんだけの傍にいて碧くんだけ考えるのは無理なのに。


大分無茶なことを言う碧くんに私は曖昧に笑みを返して、包帯を巻いてあげることしか出来なかった。

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