第13話

「……やっと来る気になったんだな。」


「仕方ないからね。お前の顔なんて見たくもなかったんだけどなぁ」


「それはこっちのセリフだ。お前らの事なんて見たくもなかった」



翠くんが重い嘆息と共に、私を何故か睨んだ。

ビクッとしてしまうと碧くんが私を隠すように抱き寄せて、仄暗い笑みを零した。



「翠、行くって決まったんだから早く出て行ってくれる?」


「……っ、」



碧くんがどういう顔をしているのか分からないけど、翠くんがサアッと顔を青ざめている事から何となく想像は出来る。


何となくだけど、前から翠くんは碧くんの事を恐れているように感じていた。


2人に何があったのかは分からないけど、きっと私は知らない方がいいんだろう。


翠くんは何も言わず部屋から出て行ったので、また碧くんと2人きりになった。



「碧くん……」


碧くんの腕に巻かれている包帯を見て、ギュッと唇を噛み締めた。

家に行く前に包帯を替えてあげないと……。


さっきより血が滲んでいるように見える。

彼の腕にある傷を見るのが怖い……。昨日見た時よりも増えているであろう傷跡を見るのは苦痛だ。


だけど、そうは言っていられない。



「包帯、新しいのにしよう?」


「蘭……なんでアイツらは蘭と俺の時間を邪魔するんだろう。ほんと邪魔……どうしたら……あぁ消えればいいのか……?」


「っ、碧くん!」


「っ!?」


暗い瞳のまま小さく物騒な事を呟く碧くんに見兼ねて、大きく名前を呼ぶとハッとしたように私を見た。そしてくしゃりと顔を歪める。

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