第12話
「帰って」
碧くんはにこりと微笑み翠くんにそう言い放った。作った笑顔はとてつもなく冷たくて。
思わず私が身が竦んでしまいそう。
翠くんは少し動揺したように言葉に詰まらせたけど、大きく嘆息した。
「帰りてぇけどな、帰れねぇんだよ」
「……どういうこと?」
「親父がお前と蘭を連れて来いって。来る気になるまで居座れって言ってるからな」
翠くんが不機嫌そうに顔を歪め、言葉通りに床に胡座をかいてしゃがみ込んだ。
翠くんの言葉に思わず碧くんを見つめると舌打ちをした。
そういえば碧くんのご両親に会ったのは、3ヶ月前ぐらいだったっけ……。
ここのマンションにこうやって何不自由なく住めているのは碧くんのお父さんがお金を出してくれているお陰なわけで。
そろそろ顔を見せに行った方がいいとは思っていた。
だけどズルズルと行かないでいたから、翠くんが催促するように言いつけられてしまったんだ。
「碧くん行こう?」
「……分かったよ。翠に何時までも居座られたら嫌だから仕方ないね」
碧くんは嫌そうに顔を顰め、重いため息をついた。
本当は私も行きたくないんだよね……。
実は碧くんのご両親が苦手だったりする。
別に私のことを虐めるとか嫌ってるわけではなく、むしろ可愛がって貰ってる方だと思う。
でも。
碧くんのお父さんもお母さんも怖いと感じてしまう。
まるで逃がさないと言われているようなあのまとわりつく様な、ドロドロしたような瞳が……怖いんだ。
ゾッとして思わず自分の両手を握りしめる。
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