第11話

「はー……な〜にしてんのお前ら。」


「っ!!」



碧くんを抱き締めて暫くすると当然割り込んできた低い声に大きく身体を揺らした。

びっくりした……。

慌てて顔を声のした扉の方に向けると、そこには壁に寄りかかり腕を組んだーーー碧くんと双子の兄弟で弟である翠くんが立っていた。



「翠くん?」


あ……。そういえばインターホンが鳴っていたのに、碧くんの血に動揺して忘れてたんだった。

鍵は閉めていた筈だけど、どうやって入ったんだろう。


「はぁ。また碧はコイツのこと縛り付ける為に自傷してんの。馬鹿だなぁお前」


「五月蝿い。勝手に入ってくんなよ」



碧くんの手首に巻かれている包帯を見て不快そうに眉を顰め、うげぇと態とらしく舌を出した。

そして私に視線を向けると、何故か苛立ったような表情をした。



「お前も何時までこのメンヘラと付き合ってんだよ。嫌なら嫌ってはっきり言えよ。」


「っ、翠くん、酷いことを言わないで」


「はぁ? 何処がだよ。お前を縛り付ける為に自傷しているような卑怯者なのに」



幾ら兄弟といえど流石に翠くんの言葉は酷い。碧くんが私を抱き締める力を強くして、じっと翠くんを見つめた。



「翠帰ってくれる。父さんに様子見てこいって言われてきたんだろうけど迷惑だ」



普段よりも低い声音を出し、碧くんは翠くんの存在を無視するように私の首筋に顔を埋め歯を立ててきた。痛みが走り、堪らず声を漏らしそうになる。


翠くんが居るのに、やめてほしい。だけど碧くんを拒絶してしまったらまた自分の事を痛めつけてしまいそうで簡単に止めて欲しいだなんて言えなかった。



「お前さぁ、殴られてぇの?」


「…………」


「俺の気持ち知っててわざとか? あ゛?」



ーードンッ、と壁を殴った音に碧くんは唇を首筋から離したけど止める気はないみたいで。

私の身体に手を滑らせる。



翠くんは不機嫌そうというより怒っているのに、碧くんは相手にする気はないみたいだ。

この兄弟は仲が悪いのは知っていたけど、私がいる前では喧嘩しないで欲しい。



「蘭は俺だけのものだ」


「っ、ンなの知ってる。……嫌ってくらいな」



私が怯えている事に気づいたのか碧くんは小さく息を吐いて中断してくれた。

翠くんは私を見てバツが悪そうに顔を歪めた。

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