第9話
どうしたら蘭は俺のものになってくれるのだと考えていた時だった。
『大丈夫!?』
ふと聞こえてきた蘭の声に、顔をあげるとそこには紙で手を切ったのか名前も知らない男子生徒と、心配そうに駆け寄った蘭がいた。
蘭の手には絆創膏があり、貼ってあげたらしい。治療をする為とはいえ俺以外の男に簡単に触れた蘭に苛立ったが、それよりもピンッときたものがあった。
蘭は優しい。
例え知らない相手だろうと、自分の前で傷ついたり困ったりしている奴がいると心配するような優しい子だ。
それは誰にでもすることで"特別"ではない。
蘭の特別の人間になれるのは、なっていいのは俺たった1人だけ。
手に入れる為ならどうするべきか。
それなら。
俺自身が狂うしかない。
「そうだよ……蘭は目の前で傷ついた人間を見捨てられない」
なんだ。簡単な事じゃないか。
思わず笑いが込み上げる。
こんな簡単な事に気づけなかったなんて。
「馬鹿だなぁほんと。」
ーー俺自身を痛めつければいいだけじゃないか。
蘭が助けている現場を見た次の日だった。
「……、碧くん……?」
蘭を呼び出し、2人きりになる。
不安そうな怯えているような顔をする蘭に俺は笑った。
そんな顔するなよ。
蘭を傷付ける気なんて全くないから。
「蘭……どうしたら君を手に入れられるのかなって、考えたんだ。それでようやく分かったんだよ」
「っ、私は、碧くんに相応しくないよ……だ、だから、」
「あはははははは」
「っ!?」
やっぱりそう言って断ってくると思ってたから笑ってしまう。
急に笑いだしたからか蘭が驚いたように目を見開いた。
そしてうっそりと笑い蘭の目の前でカッターで自分の手首を切った時の蘭の顔は今でも目に焼き付いている。
ーーーあの日から蘭は俺のものになった。
もっと早くに行動していれば良かったと後悔したくらいだ。
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