第7話

碧くんが満足してくれるまで食べさせ終えた時にはぐったりとしてしまった。

口移しをするだけならまだいい。だけど、中々飲み込まない碧くんは意地悪にも私の口内に戻したり、舌を絡めてきたりと大変だった。


どちらのものか分からない唾液が口端から垂れてしまっているけど拭うのも億劫で。

荒い呼吸を整えようとしていると、顔を近づけ碧くんが舐めとった。



「蘭……いいよね?」


「うん……、でも、明日は大学があるから手加減してね?」



休日は今日までで。明日からは平日になるから大学がある。私と碧くんは同じ大学に通っていて、受講している講義全て被っている。


明日は2限目からだけど、抱き潰されてしまったら下手すると外に出ることが出来ないかもしれない。

必須科目だから余計に行けない事になるのは避けたい。



「学校なんてどうでもいいのに」


碧くんが不快だとばかりに眉を顰め、低い声で呟いた。私を押し倒して覆い被さってきた碧くんに苦笑いをしながら、背中に手を回した。



「大学には行く、って碧くんのお父さんと約束したでしょ?」


「はぁ。分かった。大学に行けば蘭と婚姻届出していいって約束だから」


「……うん。」



碧くんと一生居なければいけない、という事実に思わず息を詰まらせたけど何とか頷いた。

この部屋に住めるのも、大学に行けるのも碧くんのご両親のお陰で。


碧くんを一生お願いね、と言われてしまっている。



ズンっと重くなりそうな気持ちになるけど、必死に気を逸らして私の身体に触れてくる碧くんに強くしがみついた。

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