第6話
「……っ、碧く、」
シャワーを浴びて、漸くご飯を食べられる、と思ったのに。
自分で食べようとお箸を持った瞬間、碧くんに取られてしまった。
そして私の背後に回った碧くんはお腹に手を回し、ピッタリとくっついて私に食べさせてくる。
私ばかりが食べていて碧くんはまだ何も口にしていない。
「もっと食べる?」
「もういいよ。それよりも碧くんが食べないと」
「なら口移しで食べさせて。箸なんて要らない」
「っ、」
口移しだなんて……。そんなのしたくない。
でも、碧くんの言う通りにしてあげないときっとご飯を食べてくれないだろう。
「してくれないなら、蘭を抱くよ」
「わ、分かったから」
躊躇ってしまったのがいけなかった。碧くんは冷たい声音でそう言い放ち、押し倒そうとしてきたので慌ててご飯を口に含んだ。
そして碧くんの方に振り向き唇を押し付ける。
碧くんの瞳が観察するように見つめてくるのが分かる。
もうどうにでもなれ、とゆっくりとご飯を碧くんの口の中へと押し込んだ。
「ん……ん、」
「は……っ……」
碧くんの舌が弄ぶように絡んで、堪らず碧くんの服にしがみつく。
碧くんが飲み込んだのを確認して唇を離した。
「蘭、もっと」
「うん」
薄らと口元に弧を描かせて笑う碧くんに頷き、今度はおかずを口に含んだ。
こんなの食べた気にならないだろうに……。
それでも碧くんが望むのなら仕方ない。
ーー私が我慢すればいいんだから。
何度もそう自分に言い聞かせて、私は必死に碧くんにご飯を食べて貰う為に口移しを繰り返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます